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「ちょっと、これお父さんないわねぇ。」
そう言いながらつまらないドラマで泣いている。
お父さんは、
「僕たちも年をとったのかもしれないねぇ。」
穏やかな顔でお母さんに言っていた。
仲良しな二人に最近、ほんとについていけないよ。
お母さんを私はシラッとして見ていた。
「あ、やだわ。そんな顔で見ないでよ桜子ったら。あなたもこの年になったら、わかるわよ。」
ふーん。そんなもんなのかな。
私のスマホが振動する。
「あ、拓ちゃんからだ。」
幼馴染の拓ちゃんからの着信。
「明日のことかもしれない。もしもし‥‥。」
そう言いながらパタパタとリビングを出る。
「桜子?」
「うん!明日試合でしょ?」
「そう。明日の個人戦観に来るって?」
最近は、剣道部の部活で拓ちゃん忙しいし、
お隣り同士なのに久しぶりに声を聞いた。
「うんうん!最後の試合でしょう?」
「そう。」
相変わらずぶっきらぼうだなぁ。
「場所はどこ?」
「総合体育館。」
「わかった。見に行くね!」
拓ちゃんはとうとう明日で剣道部引退だ。
中学のときから、毎日夜に素振りをやっていた
のを私は知ってる。
拓ちゃんの高校は、強豪校でレギュラー争いも
大変だった。
怖い先生や先輩たちのシゴキにもよく耐えたと
思う。そして、中学のときには、私とそんなに
変わらなかった身長は、
ぐんぐん伸びて見上げるほどになった。
こんなに頑張ったのだから、絶対に
いい結果になってほしい。
そう思うと、ベットに入ってからも、
興奮してなかなか眠れなかった。
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