空欄

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空欄

「実の父は、空欄……」    私は、二重の衝撃を受けた。  本当の父と母だと思っていた両親が、実は養父母だったこと。  それから、私の本当の父が分からないということ。  市役所の床が、ガラガラと崩れるような気がした。  私は、市役所のソファーに座り込んで、人目もはばからず泣いていた。 「お嬢ちゃん、どうかしたのかい?」  隣に座ったおばあさんが、私を心配して声を掛けて来た。    だが、誰がこんなことを言えるのだろうか。   「い、いえ。何でもないです」
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