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揺籃の船上にて
潮騒がやけに耳に響いた。何かが浮かんできて……視界が揺らぎ、開ける。宵闇に月がぼうっと浮かんでいた。淡い黄の光。
起き上がって、辺りを見回す。俺が寝ていたベッド。簡素な箪笥と机、椅子。そしてベッドの隣には大きな窓がある。俺はその窓を開けた。
「うわぁ……」
――――灰色の海の上に、俺はいた。灰色の海、灰色の空の中で、俺の乗っている白い船は一際存在感を放っていた。海はただ穏やかで、子守歌のような波の音を俺に運んでいる。しかし、ここはどこだろう? こんな景色、見覚えがない。そもそも俺はこんな所にいたっけ? ……よく覚えていない。謎だらけだ。
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