九月 自宅

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「そんなにしたいの?」  うりうりと頬をつつかれる。化粧落ちるからやめて。その意味を込めて手を払う。 「とっとと帰って欲しい」 「え、傷つく」 「勝手に上がり込んでおいてそれはないでしょ」  するならする。しないならしない。帰るなら帰る。てか、帰れ。  セックスするのは好きだけど、この男はなんとなく嫌いだ。妙に女々しくて、まだ彼女だと思い込んでて、なのに、自己中で。 「でも、会いたかったし」 「連絡してくれたらそれなりに準備できるじゃん」 「あ、毛の処理とか」 「馬鹿」  今日の下着の色を思い出しながら、ケンジを睨み付ける。こういうデリカシーのないところが嫌い。なんだかもう全部嫌いだ。なんでセフレになったんだろう。体の相性が良いからか。そうかそうか。  付き合っているときは、男らしくてかっこいいと思っていたのになぁ。どこで間違えてしまったのだろう。こんなにも情けない男になってしまっていた。
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