九月 ラブホテル

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「おっさんかよ」  トモヤが呆れたように笑ってあたしの腰に抱き付く。細身なのに筋肉はしっかりと付いている。体つきは大好きだ。体つき、は。 「舐められたくないから」 「ベッドではオレに舐められてるのにな」  思わず舌打ちしそうになってしまった。けれど、我慢。女は誰でも女優なのだ。男のクソ寒いジョークにもにっこり笑わなければいけない。良好な人間関係を築き上げる秘訣でもある。  鼻で少し笑ってからくしゃくしゃと頭を撫でてやる。ワックスと汗がまざりあっていて手がベタついた。少しだけ後悔。 「なあ、リコ」  少しだけ真面目な声が腰から聞こえてくる。彼氏のいないあたしの腰にキスマークを付けているみたいだ。くぐもった声がくすぐったい。トモヤの唇が肌から離れる。赤い鬱血痕が花びらみたいだった。  生返事をするとトモヤに抱き締められた。がっちりとした筋肉を再確認して、心が疼き出した。もう一回するのかな、そう思っていたらキスされた。恋人がするみたいな甘いキス。さっきまで貪り合っていたそれとは真逆の。 「なあ、彼女と別れたら付き合ってくれる?」
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