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九月 自宅
カツカツとヒールを鳴らしながら帰り道を辿る。タワーマンションにでも住んでれば良いものの、理想と現実は乖離しているもので。
会社から徒歩十五分くらいのところにあるアパートの三階。そこがあたしの住処だった。ボロくもないけれど新しくもない。ほどほど。部屋の中も至って普通。どこにでもいるOLの、どこにでもありそうな内装。ベッドがあって、ソファがあって、テレビがあって、タンスがあって、ドレッサーがある。
「よう、おかえり~」
セフレもいる。
「いやいや、来る前に連絡寄越せって言ってるじゃん」
さも当然のようにソファに寝そべって勝手にテレビを見ているのは二人目か、三人目かのセフレ。名前はケンジ。だと思う。ケンタだったかもしれない。
元カレっていうこともあって、当たり前のように合い鍵は持ってるし、不法侵入もしている。鍵を変えようかなと思ったことはあったけれど、別に私も本気で嫌なわけでもないから困りものだった。
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