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後悔と恐怖
私の人生は何だったのか
と
死ぬ前に思いたくはない
それを考えるには余りにも
そのときはもう
時間が足りないから
だから考えよう
今のうちに
まだ私が元気なうちに
これを失いたくない
と
死ぬ前に泣きたくはない
それを受け入れるには余りにも
そのときはもう
時間が足りないから
だから失っていこう
今のうちに
まだ傷を癒せるうちに
そうして少しずつ
終われる私になっていこう
会えて良かったと
たくさんのものに手を振って
そうして少しずつ
離れていこう この世界から
薄れていこう 前もって
後悔と恐怖を
味わいたくはない
だから恐れていよう
やがてくる終わりを
絶望と孤独には
慣れていけばいい
だから良しとしよう
いつかではない今日の涙も
喪失も痛みも
望むところだったと
嘘でも
それでも
どうしても手離せないものを
いやだいやだと駄々をこねて
私は必死に守るのだろう
聞き分けの無い子のように
ばかだね
何も残らないよ
おまえの手の中には
誰も連れていけないよ
おまえの行くところには
ばかだね
守れば守るほど
それはおまえに喰い込んで
剝がされるときすごく痛いよ
知ってるだろう
おまえは
私は
いつでもそう
私は私と対峙して
その愚かさに呆れ果てて
ばかだねと苦笑して
泣いている頭を泣きながら撫でて
抱きしめて
絶望して
悔しさを噛みしめて
それでも
我が子のように愛してしまう
わかるよ
だって悲しいよね
寂しいよね
別れたくないよね
わかるよ
痛いくらいわかる
だって私だもの
でもね
そんな私とも 私は
別れなければならないときが来る
いつか必ず
私は 私たちは
私自身を失うのだと
絶対に知っている
ばかだね
私も
何もかもが
どうせ何もかもが
塵に帰すのだとしても
この悲しみも
寂しさも
風と化すのだとしても
私は
後悔と恐怖を
味わいたくはない
だから未来のことを
終わりのことを考えよう
絶望と孤独には
慣れていけばいい
どうせ私と私の別れは
一番最後になるのだから
私が私を
あやす時間は
誰より多くあるのだから
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