悲しみユビキタス

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悲しみユビキタス

 私がいて  ひとつ隣に悲しみがあり  ひとつ向こうに悲しみがあり  ひとつ後ろに悲しみがあり  上と下にも悲しみがあり  気化した水のように  それはありふれたもので  林檎が落ちるように  それはあたりまえのこと  私がいて  ずっと前から悲しみがあり  ずっと消えない悲しみがあり  ずっと先にも悲しみがあり  私自身も悲しみであり  手を伸ばせば  いつでもそこに  虚空のように  悲しみがあり  見えないひとには見えないけれど  見えるひとには見えるのです  あなたには見えますか?  遍在する悲しみが
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