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4月1日。
2年になった俺は、親友の金付ふゆきと、お昼に向かう途中で衝撃の光景が目に飛び込んできた。
今年の桜は散りかけて斑模様になっている。
俺がいる場所は3階。
先生がいるのは1階、職員室前。
先生が生徒の頭をなでていたのだ。
俺はその光景を見たまま息ができないほどの嫉妬が心の中に生まれていた。
「はる?どうかしたのか?飯食うぞ!」
「・・・あぁ、うん」
ふゆきの言葉が我に返らせる。
現実を受け止められない、なぜあの手が俺ではなく他のヤツに触れているのか。
どうしょうもないな。あの手は俺のものではないのに・・・
気持ち悪い、こんな想いのせいで先生に迷惑がかかってはいけない。
じっと静かに、ただ名前を覚えて貰うだけでよかったのに・・・
自分の貪欲さに吐き気がする・・・
5月1日。
放課後、ふゆきにカフェに誘われた。
「はる、最近さ悩み事とかあんの?」
「なんで?」
俺は素直にそう思い、尋ね返した。
「ここ1ヶ月ずっと、ぼーとしてるような、心ここにあらずな感じがあるからさ。」
「・・・言っても、引かないか?」
不安だか、親友のふゆきには言っておこうと思った。
「なんだよ。信用ないのか?俺ら、5年以上一緒にいるんだぞ。」
「・・・・・俺、実はさ、数学の森山先生が、好きなんだ、恋愛、対象で。」
俺は言った。正直に。でもコレが裏目に出るかもしれない・・・。
怖くてふゆきの顔が見れなくなり、俺は床の木目と目を合わせた。
「・・・・・・・・なんだ、そうか。というかやっぱりな!」
長い沈黙の後、ふゆきの言葉に驚き、俺は顔を上げた。
「1年前かな。気がついたのは。
なんとなく、はるの目線がいつもと違うなって思ってて、見てたら森山先生追いかけてるからさ。あー好きなんかなって。
俺別に、偏見とかないし、言ってなかったけど、はると出会う前に年下の男子と付き合ってたしな。
俺の方が、黙っててごめんって感じ。」
俺の事を見ていた事にもびっくりだったが何より、ふゆきが男の子と付き合っていたことに驚いた。
自分の行動に恥ずかしさを感じて顔が熱くなる。
「俺、早くふゆきに言えばよかったな。」
しばらくなんでもない話をした後、ふゆきはとんでもないことを言い出した。
「・・・先生のこと、諦めないで頑張ってみたら?付き合えないとしてもさ、想いぐらい伝えても良いと思うよ。」
「え!・・・いや、良いんだ。見てるだけで、名前さえ覚えてもらえれば、それで。
何も、望んじゃいけないと思うんだ。」
ただでさえ、生徒が先生に好意を抱くこと事態、世間は許さないのに俺が想いを寄せているのは同性の男なのだ。
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