海に溶けた

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気付いたらいつも見ていた。きっかけがなんだったかなんて覚えてない。 いつも窓際の自分の席に座り誰ともつるむでもなく自分の世界で生きてるやつだった。 「なぁ、あいつキモくね?」 「わかるーあいついっつも一人で本ばっか読んで」 「おたくじゃん」 そんな言葉が教室に飛び交ってもあいつは気にすることもなく視線は手にある本からどこにも移される事はなかった。 「ねぇー晴人もそう思うでしょ?」 「俺も本読むの嫌いじゃねぇし」 嘘。漫画は読むけど小説は苦手だ。 別にかばったわけじゃない。そんな殊勝な気持ち持ち合わせてないし。 ただなんもしてないあいつが理不尽に悪口言われてんのが少し気になっただけ。 「あー、お前ら俺の晴人に近づかないでくれる?」 「誰がお前のだよ」 「えー?俺らの仲じゃん?」 ケラケラと笑いながら俺の周りに集まっていた奴らを蹴散らしまとわりついてくる腐れ縁の悪友洲崎康介。 「でも、晴人本なんて読まないでしょう?」 耳元で囁いてくる理由は知らない。 こいつは俺の全てを知りたがる。なんでかなんて知りはしないが別に隠す事はないから今まで聞かれるがままに答えてはきた。 「読むよ」 「えー?嘘はだめだよ。晴人の事なら全部俺は知ってるんだから」 「今日から趣味になった」 「なにそれー」 アハハと笑いながら俺とあいつに目を向ける康介は目敏い奴だなと感心する。 「なに?晴人、あのオタク君好きになったの?」 「バカか」 なんで俺が男を好きになんだよ。
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