海に溶けた

喪失感

施設管理なんて言葉はかっこよく聞こえるがただの雑用係だ。
このビルは今急成長中の会社C&Ｋの本社ビル。

フリーターを続けてた俺がその名前が気になって就職したのが一年前。
まぁ、社員なんかなれるわけねぇから施設管理だけど、給料も悪くねぇし頭使わなくていいし楽。

「お先に失礼しまーす」

30にもなってその話し方はとなんだの言われてたのももう諦めたのか今となっちゃまぁあいつだしなというノリになっていた。

貫けばなんとでもなるもんだな。

ワンルームのボロいアパート。それが俺の城。
金がないわけじゃない。こう見えてかなり蓄えはある。働くだけ働いて使わないから溜まっていくだけだが。

女遊びもとっくに辞めた俺の楽しみは今はもうない。
彼女がいたこともあったがどうも好きという気持ちが続かなく今まで生きてきた。

あー、多分俺結婚できねぇわと思ったのは2年前。

そっからは一人仕事と家の往復。
つまんねぇとももう思わなくなったか。

たまに出掛けるのは幼馴染の康介に呼ばれた時くらい。だけど

「なんで晴人がこうなっちゃったんだよー」

と会う度泣かれて最近はちょくちょく断っているが、そんなん俺にもわかんねぇんだからどうしようもない。