嘘つきの本音

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「……このくらいの暗さ、平気か?」 「うん……大丈夫」  部屋の天井に設置されている照明は消されていたが、勉強机の上にある電気スタンドが白く強い灯りを放っている。ある意味照明の豆電球よりも明るいそれは、俺の抱く闇への恐怖を心強く打ち消してくれていた。 「悠馬、こっち」  囁くように呼ばれては、晶の座るベッドへと近付く。その隣りに腰掛けるとすぐに腰を抱き寄せられ、甘いキスを落とされた。 「ぅんン……っふ、う……ン」  唇が重なり、舌を絡み取られ、口腔内を犯される。もう何度もキスはしているのに、初めて優しく、晶に求められているように感じた。 「……んっ……悠馬、ベッドに乗って」 「へ……?こぉ?……ぅわっ」 「そう……んで、腰上げて」  言われるがままベッド上に足を上げると、仰向けに押し倒される。そして腰を上げれば、ズボンと下着を一緒に脱がされて少し慌てた。 「ちょ、俺ばっかり嫌だ。お前も脱げよ」 「……………」 「な、なんだよ……黙って……?」  不公平だろと、そんな目で睨んでやれば彼の動きがピタリと止まる。そしてすぐに晶自身着ていた服を脱ぐと、発情オオカミのようにギラついた瞳で覆い被さって来るのだった。 「悠馬、エロい」 「は?」 「素直なお前はエロいって言ってんの。……両想いってやべぇな。チンコ痛ぇ」 「ば、バカ!そんなもん見せんな!」 「なんだよ?脱げて言ったのお前だろーが。今更照れんなよ。昔はよく一緒に風呂とか入ってたのに」 「昔の話しだろ!?い、今は……あの頃と違うし……」  服を着ていない幼馴染みの身体は、部活でしっかりと鍛えられており程良い筋肉が付いていた。だからこそ目のやり場に困るし、何より、下半身の元気の良さに至っては恥ずかし過ぎて直視も出来ない。  俺が羞恥に耐えかねて顔を背けると、それを追い掛けるようにして顔を覗き込まれる。いつもならここで、しつこい!と怒鳴る俺だが……嫌われないようにする為にも、甘えるって決めたのだ。だから、少しでも自分を変えようと、その首に腕を回しては抱き寄せて、自ら驚いている晶にキスをした。 「……っ、悠馬?」 「晶、俺……本当はずっと前から、お前が好きだった」 「!?」 「だから、花火大会も毎年一緒に行って、夜道が暗いからって……わざとお前の近くを歩いてた。肩がぶつかるたんびにドキドキして、ラッキーだって……心の中で喜んで……。でも、俺がゲイだって知られたくなかったから、本当の気持ちは隠してたんだ」  甘えるついでに本音を零せば、なんだか気持ちが楽になったような気がした。ずっと晶に隠し事をしていたから気を張っていたが、こうして胸の内を晒す事で、構える必要がなくなったのだ。  だから、甘える事を頑張ろうとしていた俺の気持ちはどこでストッパーを作動していいのか分からずに、ついつい口元が暴走してしまう。 「……晶がずっと好きだった。これは嘘じゃなくて、本当だから。……ずっとお前が好きで、キスもセックスも晶にシて欲しくて、ずっと、いつも抜く時はお前を想像して……!」 「ちょ、悠馬、ストップ!落ち着けって」 「で、でも俺、本当に晶の事……っ」 「分かった。分かったから……あんま煽んな」  優しく呟く晶の手が俺の腰を撫で、その感触にビクッと我に返り言葉を飲み込んだ。  気持ちがスッキリしたからつい恥ずかしい事を口走ってしまったが、俺の気持ちはちゃんと彼に伝わったらしい。  腰に触れていた手が今度は内股を擦り、竿の根元やその周辺を執拗に撫でて来る。 「……ぅあっ……、触り方、エロいからぁ……っ」 「だって悠馬のここ、スベスベで気持ち良いし……ずっと触ってたい。……ダメ?」 「だ、ダメ、恥ずかしぃから……あんま触んな」  ただの憧れでキレイに毛を処理していただけなのに……こんなに触ってもらえるなら、やって良かったと俺も嬉しくなった。  気分を良くした俺は身を捩り、上目遣いに晶におねだりをする。 「……晶、もぅ……欲しいから、早くシて?」  こんな事を言われて、この発情オオカミが我慢出来るはずもないだろう。  彼はすぐにローションを準備すると、興奮しながらもゆっくりと前戯をしてくれる。その間もずっとキスをしてくれて、緊張も解れつつ、俺は素直に彼に身を委ねる事が出来ていた。 「……悠馬、もう平気か?挿れるぞ?」 「ん……、大丈夫……早く晶が欲しい」  前に抱かれた時の快感が、俺の身体を熱くさせている。  長いディープキスと前戯で、俺の思考回路はほとんど溶けていた。だから彼の話す内容も、自分が何と返したのかさえあまり覚えていない。  晶はゴムの準備をしつつ、薄い笑みを浮かべては「これ、覚えてる?」と聞いて来た。だから俺はそちらを見て、ゴクンと喉を鳴らすのだ。 「……ゴム、コンビニで買ったやつ?」 「そう。初めて使うけど、サイズピッタリ。良かった」 「うん……晶の、大っきい……」 「えっ」 「それ、早く俺の中にちょーだい……?」  もう、本当にただただ晶が欲しくてたまらなかった。  俺のそんなあざとい誘いに晶は耳まで赤くして「……分かった。話しは後でな」と、やっと集中して俺の肌に触れてくれる。  晶と繋がるのは、なにもこれが初めてでは無い。だけど俺にとっては、心が1つになって初めての行為なのだ。  俺はもう一度晶を見つめると、嘘では無い、本当の気持ちを口にした。 「晶、愛してる。……もう、なにがあってもお前を離してやれないから」  大人になっても、それは決して変わらないだろう。  俺の微笑みに応えるように、晶も笑っては「うん。知ってる」と優しく抱き締めてくれたのだった。
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