面接

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面接

明転 面接官 机をはさんで上手に座っている。 アナタ 机をはさんで下手に座っている。 面接官「それでは、面接を始めさせていただきます。最初にアナタの長所と短所を教えてください」 アナタ「長所は勤勉で真面目なところ、 短所はこう言っとけば大丈夫だろうと思っているところ」 面接官「なるほど。では、趣味はなんですか?」 アナタ「競馬です」 面接官「競馬の長所と短所はなんですか?」 アナタ「勝ったら嘲笑されないのが長所、単勝が難しいのが短所」 面接官「なるほど。では、アナタが尊敬している人物は誰ですか?」 アナタ「ジョニーです」 面接官「ジョニーの長所と短所を教えてください」 アナタ「トイレにいっといれ、という前にベンジョニー行ってしまうのが短所。しかも、二時間待たせる。長所はパイレーツ・オブ・カリビ何とかに出ているところ」 面接官「忙しそうですね」 アナタ「はい」 面接官「忙しいと口に出している奴について意見しなさい」 アナタ「口に出せるだけ、暇だと思う」 面接官「つまり?」 アナタ「かまってちゃん」 面接官「かまってちゃんと困ったちゃんの違いは?」 アナタ「寂しいのが、かまってちゃん、 侘びしいのが困ったちゃん」 面接官「寂しい+(プラス)侘しいは何ですか?」 アナタ「さわびしい」 面接官「さわびしいとは何ですか?」 アナタ「みんなにかまって欲しくて騒いでいるけど、誰にも相手にされずにさびしがっている状態」 面接官「それはどのような人がなりやすいのですか?」 アナタ「駄々っ子」 面接官「対処法は?」 アナタ「抱っこ。駄々っ子抱っこ」 面接官「(早口で)駄々っ子抱っこ」 アナタ「(同じく早口で)駄々っ子抱っこ」 面接官「(早口)駄々っ子抱っこ子駄々っ子」 アナタ「(早口)駄々っ子抱っこ子駄々っ子」 面接官「(早口)駄々っ子抱っこ子駄々っ子子だだ駄々っ子子駄々っ子」 アナタ「(早口)駄々っ子抱っこ子駄々っ子子だだ駄々っ子子駄々だ っっ(噛む)」 面接官「減点1」 アナタ (しょんぼりする) アナタ「(もじもじしながら)すいません」 面接官「タバコですか?」 アナタ「違います、トイレ行きたいんですけど」 面接官「ジョニーが今さっき入ったばかりですよ」 アナタ「えっ! じゃあ仕方ない、我慢するか」 面接官「それでは、『我慢』を使って短い文を作ってください」 アナタ「俺の中にある忍耐、ガマーン、ベイベー」 面接官「(立ち上がる)イエーイ!」 アナタ「(同じく立ち上がる)フゥー!」 二人 ハイタッチをして何事もなかったかのように座る。 面接官「アナタの中で最近起こった一番うれしい出来事を教えてください」 アナタ「貴方が私の名前を憶えていてくれたことです?」 面接官「はあ?」 アナタ「だって、さっきからアナタって呼んでくれているじゃないですか。穴に田んぼの田で穴田です。憶えていてくださったのですね」 面接官「以前どこかでお会いしましたか?」 アナタ「……あの時の鶴です」 面接官「タバコは吸いますか?」 アナタ「吸いません」 面接官「鶴だけに、スワンですか?」 アナタ「鶴はクレーンですよ。あの? 驚かないんですか?」 面接官「何がですか?」 アナタ「鶴なんですよ。私」 面接官 アナタに不審な目を向ける。 アナタ「すいません。嘘です」 面接官「えっ? タバコ吸うんですか?」 アナタ「違います。鶴じゃないってことですよ」 面接官「なんだ、あの時の鶴じゃないのか」 アナタ「鶴助けたことあるのかよ!」 面接官「ええ、これまでに七十羽ほど」 アナタ「多いな!」 面接官「今、私が経営しているキャバクラの女の子、八割は鶴ですよ」 アナタ「ほぼ鶴じゃないか!」 面接官「残り二割も鶴です」 アナタ「何で分けて言うんだよ。全部鶴でいいじゃないか」 面接官「何はともあれ、嘘をついたので、ペナルティです。明日からアナタの耳は水餃子になります」 アナタ「何でだよ。せめて焼いてくれよ。年がら年中、寝耳に水になちゃうよ」 面接官「焼き餃子は中国にはないので無理です」 アナタ「なら水餃子で我慢します」 面接官「よろしい、では面接を続けます。アナタはウサギとカメの話をご存知ですか?」 面接官「はい。ご存知です」 面接官「短く説明してください」 アナタ「長距離を走るのが苦手なウサギに対して長距離走での勝負を持ちかけた、とてもいやらしいカメの話」 面接官「ウサギは何故勝負を断ることが出来なかったのでしょう?」 アナタ「安いプライドを捨てられなかったから」 面接官「教訓」 アナタ「つまらぬプライドは捨てろ、恥をかくだけだ」 面接官「加点1」 アナタ 小さくガッツポーズ。 面接官 それを睨む。 面接官「減点5」 アナタ しょんぼり。 面接官「チャンスクーイズ!」 アナタ ? といった顔。 面接官「お待たせしましたチャンスクイズの時間です、このクイズに正解しますと、アナタを合格とさせていただきます。今のご心境はいかがですか?」 アナタ「寝耳に水です」 面接官「それでは問題です。」 アナタ「ババン!」 面接官「あ、そういうのこっちでやりますんで」 アナタ「すいません」 面接官「タバコです……」 アナタ「(食い気味に)違います」 面接官「それでは問題です」 アナタ「私からも問題です」 面接官「じゃあ、アナタからどうぞ」 アナタ「えー、面接官さんからどうぞ」 面接官「いやいや。アナタからどうぞ」 アナタ「ううん。面接官さんから」 面接官「アナタ」 アナタ「め・ん・せ・つ・か・ん」 面接官「じゃあ……いっせーのーで一緒に言お」 アナタ「うん。わかった」 二人「いっせーのーで。幸せになるにはどうすればいいのでしょう?」 二人 驚いた表情で互いを見つめ合う。 面接官「同じだ」 アナタ「ホントだ。おんなじこと考えてたんだ」 面接官「えっ、じゃあ答えは? まさか?」 二人「俺(私)(面接官は〈私〉)と一緒にいること」 二人 無言。 アナタ「ずっと、同じ気持ちだったんだな」 面接官「うん。そうみたい」 アナタ「いっちゃう? どこまでも二人で」 面接官「うん。ついてく。どこまでも、アナタについてく!」 アナタ「(立ち上がり)よし、じゃあ行こう。僕らの未来へ(上手に向かって走り出す)」 面接官「(立ち上がり)待って!」 アナタ 立ち止まり、面接官に目をやる。 面接官「(手を差し出し女の子っぽく)手」 アナタ「ったく、しょうがねえなぁ(面接官の手を握る)」 面接官 はにかむ。 アナタ「行くぞ(面接官の手を引き、上手に退場)」 数秒後、面接官のみ戻ってきて先ほどの席に座る。 面接官「次の方どうぞ」 SE トイレの水が流れる音。 ゆっくりと暗転
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