#2 carnival 後半

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ

#2 carnival 後半

…… 学園祭の準備は着々と終わっていった、 今年は二年生合同で“和装茶屋”のような出し物をする予定だ。 春輝が二年生に声をかけて集まる機会が割と増えていたからか顔見知った仲に手際良く作業が進む。 不意に春輝と二人になったので、 もしかして1人で速川に会いにいったんじゃ無いかと推測し声をかけた。 「…あれから速川は来ないな…会いに行ったのか?」 「行かないよ、…1人で行ったら怒るでしょ?」 ん?…春輝の性格を全て知っているわけじゃ無い。 でも何かと人に頼ることに関してはしないようにと避けていたように思う。 俺に対しては始めから声をかけて来ていたが、 最終的にあの場で逃げたという事は本当にダンスバトルだけをするつもりだったんだろう。 「…1人では、行かないよ…」 繰り返すように呟く春輝は怖い顔をしていた。 どっちだ?嘘か?本当なのか? 「ねぇ、封牙に隠してんの?」 その言葉に緊張が走る… 頷く事しかできなかったが、 俺自身ゲイだって事は封牙には言えてない… アイツにだけは…知られたく無い… だって… 「隠す必要あんのかな?」 「あるんだよ…」 春輝の言葉に被せるよう弱く言う。 いずれバレることかもしれない。 でも、ずっと今まで隠して来たものを今更言うなんて…出来るわけ無かった。 「まぁ、なるべく協力する…巻き込んだの俺だし」 「……?あぁ」 協力…? バレないように協力してくれるってことか、 確かに今現状、速川やナトのいるタイミングに封牙と鉢合わせするのは危険だった。 … 学祭が始まる、 それは騒がしい3日間の始まりだった… いつもより賑やかな学祭に アイツらのことを忘れていた。 最終日の午前…俺と封牙の2人は接客を担当する。 今日は午後に練習してきたダンスを舞台ジャックして披露する日だった。 …マジでやるんだろうか。 そんなことを考えながら、 接客をしていると、廊下が騒がしいことに気づく。 …なんだ? 「りーちゃんと春輝くんの教室って何処?」 その声には聞き覚えがある。 「春輝!」 思わず接客の手を止めて、春輝の服を引っ張った。 「ん?なに?」 「速川だ、来たっぽい」 「わかった」 春輝はそう言うと、 一緒に飲食担当していた玲やレイカと何かを話していた…俺も封牙に一声かける。 「悪い、ちょっとだけ外す」 「え?何で?」 「…ヤバイ奴らが来たんだよ」 「俺も行く」 「いや、接客誰もいなくなるのはマズイ」 そう話してると、 呼び込みに出ていた虔太郎が戻って来たので、 即座に捕まえる。 「ちょっと緊急事態、接客変わってくれ」 「お、おぅ…」 「理人、いけるよ」 「こっちだ」 …声のした方を覗き込むと、案の定… 速川とナトの2人がいろんな生徒に聞いて回ってるようだった。 「速川くん、久しぶりじゃーん…よかったら、あっちで話そうよ〜?」 「春輝くん…探したよ?…いいね…なるべく静かなところでお話し出来るかなぁ?」 そんなやりとりを俺はじっとみていた、 ナトも同じだ…特に話しかけてくるわけじゃ無い。 何を考えてるのか。 そして春輝との読みは当たったらしい… やっぱりこいつら…連んだのか… 場所を移動といっても学祭の真っ最中… そこそこ人通りもあるが…どこに行くつもりだ? 空き教室に入り込むとガヤガヤした外の空気とは違う静けさに包まれた。 「ねぇ、君たち…まじで付き合ってんの?」 春輝と目が合う… さぁどうする…、 ここで騒動を起こすわけにもいかない。 「付き合ってるってより、性欲処理する関係じゃない?」 「へぇ〜証拠は?」 なんでそんなことに証拠が必要になるんだ?? 俺は本当の事を言ってしまおうか口を開こうとすると春輝に肩を抱かれた。 「ッ、??」 「目つぶれ」 不意に春輝から耳打ちをされ、ゾクっとした。 クソ…もうどうにでもなれ!! 春輝の服をぐっと掴む…思わず心臓の音が早くなっていき目を瞑ると余計に緊張した。 肩を抱く手と反対の手でマスクをそっと外されるのがわかる。 キスするってわけじゃ無いよな?! 近づいてくるのを感じて、そっと目を開けようとした瞬間、パシンッと強い叩くような音がした。 「なぁに?」 速川が春輝に向かって手を上げたようで、 その腕を掴んだようだ。 怒りを露わにした顔で気付く…そうか、 こいつ…春輝に告白したんだったな… 未だに好きなのか? 「もうわかったよ、今日は挨拶だ」 速川は春輝の掴む手を振り解いて「また会おう」と微笑んだ…これだけか?これだけのために来たんだろうか…ふとナトを見ると笑っていた。 さっきまで無表情だったのに気味が悪い… 過ぎ去っていく2人を見てため息が漏れた。 こんなところでバトルとかにならなくて良かった。 「なに?キスしたかった?」 「おい、やめろ!」 春輝が顔を近づけて来るので慌てて制御する。 「照れてる可愛い〜♡」 「どこをどう見たら照れてんだ」 やっぱり力が強くて必死に遠ざけるが中々に手強い…戯れていると急に、パッと離され…真剣な顔つきになった。 「…理人、嫌な予感がする…緊急の時は俺に110って送れ」 「…わかった」 クラスに戻るとさっきまでとは違った普通の空気感が伝わってくる。 …やっぱり、こういうのを感じると、 みんなと自分が生きて来てる世界はきっと 違うんだろうなって 思い知らされた。 …… なんだか、最近モヤモヤする。 春輝と出て行く理人… 確かに接客は居なきゃ駄目かもしれない。 でもさ、ずっと一緒に何かあったら戦ってきたよね?…最近少し避けられてるように感じる。 気の所為だろうか。 戻ってきた理人に声をかけると、 「大丈夫だった…喧嘩にはならなかった」なんて話の内容までは教えてくれない。 なんだろう、仲間外れのような気持ちになった。 春輝に聞いてみたら、教えてくれるかな? …学祭最終日のダンスジャックは集中したいから、 2人とさっきまでの会話はしなかった… こういうのやったことなくて、 楽しい思い出がひとつ増えたのは凄く良かったな。 ………… 「はぁ〜疲れた、腹減ったなぁーーー」 俺が舞台裏でゴロッとすると、 春輝が横に一緒に倒れ込んだ。 「わかる、何か食いに行こうよ」 「行く行く!」 …全然疲れてなさそうだなぁ… 「春輝って意外と体力あるタイプ?」 「あ〜…最近走ってたからじゃん?」 そういった瞬間「イメージ無いな」と理人が突っ込んできた。 話に割って入ってくるの珍しい…あまり普段自分から話さないのに、春輝には慣れてるよなぁ… 「酷くない〜?俺だって鍛えたりするし〜」 床にうつ伏せになりながら、拗ねる春輝は見た目とのギャップがあって面白い。 「つか、早くなんか食いに行こうよ」 そう言って立ち上がるので、一緒になって立つ。 「俺は着替えてくるから先言っといて」なんて理人が言い去っていく。 「封牙も一緒に着替えてくれば?」 「ん?なんかいいや…春輝行ってきてもいいよ?」 「じゃあ、このまま玄関あたりで待つか…」 そんな話をしながら、学祭の後片付けをしてるのを横目に、本当はいけないだろうが残った出店の飲食物を手にとり玄関近くまで移動してきて、 外にあるベンチに腰をかけながら軽くつまんで待つ。 春輝って、くすねるの上手いな… なんて笑ってしまう。 「あ、理人にいる場所LINEしとこ」 「なぁ、春輝〜…」 くすねた食べ物を口に頬張りながら、 やっと2人だし何か聞けないかと問いかける。 「ん?どうした?」 「…理人と何やってんの…?…なんか最近、俺避けられてたりする?」 こういう事、普段ならあんまり突っ込まないから変に思われたかな?…信頼していないとかじゃない、ただなんとなく気になるんだ。 「…俺もさ、なんか嫌なんだよな封牙にずっと黙ったままなのが」 「…やっぱりなんかあるの?俺なんかした?」 「全然そーいうのじゃないよ」 頭の上にポンポンと手を置かれて、 なんだかホッとする。 「お母さんみたい〜」 「それよく言われんだよね〜」 「お父さんよりお母さんって感じ。」 「やばいじゃん、オネェ目指すか」 「似合うんじゃない?オカマ?」 「あらやだ、どうしましょう〜♡」 2人してバカっぽい会話をしながら笑う。 何というか、春輝といると自然に楽しい。 オカマの真似まで上手いんだなぁなんて、 さっきまで悩んでたのに、 まぁ事情があるなら仕方ないな… なんて思っていた。 俺にできることやればいいか… 「あのね、理人とは…」 春輝が話し出そうとしたその時、 携帯に通知音がする。 パッと携帯を見た春輝の顔色が変わり、 「話は後だ、封牙走れ!!!」 「?!…おう!」 なんて春輝が言うと俺の返事よりも早く 急にベンチを乗り越え、人の波を駆け抜ける… 階段で素早く二階に上がり、 窓の外を春輝が見渡すので、一緒に見た。 「くそ、どこだ…」 春輝の言葉に何かを探している? 自分も周りを見ると怪しげな動きをする車が見えた…なんだ…あの黒い車… 「春輝、あれ何だ?」 「…封牙ナイス!」 「えっ、…ちょ…」 その瞬間、二階から春輝が飛び降りた。 …結構…高いぞ!?…普通に着地するものだから、あの身長にその身軽さは驚いた。 俺だって… 流石に二階から飛び降りたことは無い、 隣に一段屋根を伝って行けそうな場所を見つけ、 屋根の上から走って春輝を追いかける。 やばいじゃん、身長の歩幅か? 足にそこそこ自信はあったが、 春輝の走る速さには驚いた。 「オラ、てめぇ…理人を離せ!!!」 春輝の声が響いて、ことの緊急性を感じる。 理人が危ないのか!? そう思ったら、屋根からフェンスへ飛び越え、 上手いこと校外に着地をすることができた。 一か八かだったが、やれば出来るものだ。 黒い車が3台。 派手な男達が俺たちを取り囲んだ。 学校の前で喧嘩なんかしたらヤバイかもしんないが、っと思った次の瞬間… 俺や春輝に向かって何か投げられる。 煙幕の上がる花火なのか目が痛い… その音と一緒に車三台はすぐさま走り出す。 「あーーーー、、くそ!!!」 「春輝?」 思わず地面を殴る姿、相当ヤバイ状況なのか? 「1人にすんじゃなかった」 「行こう」 俺が春輝に声を掛けると、にっと春輝は笑った。 急にどうしたんだろうか… 「封牙…巻き込むことになるけど、一緒にいくぞ」 「任せろ!理人が危ないんだろ?俺も行く!」 「シャァ!!!!」 俺の背中を叩いて、春輝が走り出したので、 俺も後についていく。 少し走った先にバイクがあった。 「乗れ!」と言われてヘルメットを投げられたので、すぐさま着用する。 「封牙、相手は危ない街の地下とかに溢れた連中だ…絶対無理すんな」 「なんだよ、無理すんな…は、お互い様だろ?」 そう言った後、バイクの音で上手く聞こえなかったが「ありがとう」とそう聞こえたような気がする。 正直、春輝とこういう場面になったことが無い。 確か、ずっと高校1年生の時に鷹左右兄弟は強い、 怖い…なんて恐れられていたイメージだけだった。 みんなそれで近づかなかったし、 腫れ物みたいにしてたっけ。 さっきの雰囲気からして、 強いんだろうな… よく傷だらけになってる時もあるし、 でも、高校2年生になって、 理人が話してるのを見て… 悪いやつじゃないんだろうなって思った。 話してみたら暖かくて、楽しくて。 不思議と安心感があるんだよな〜… 「俺、理人に頼って迷惑かけた…だから、封牙にも迷惑がかかるかもしんない…」 「友達だろ?…迷惑なんて思ってないって」 「助かる」 その会話を境にバイクは一気に加速した。 薄らと夕暮れどき、街に灯りが点く。 暗い路地に点灯する電気は暗い街を怪しく彩っていた。 ネオンの看板が立ち並び、 壊れた車に既に酔っ払った人が道端で倒れてる。 少し遠くにバイクを止めて、 途中から春輝と歩いていく。 ドラム缶の裏で男女が絡み合ってるのが目について、不意に目を逸らした。 こんな場所には来たことがない… なんだか怖いな。 春輝や理人は出入りしてたのか? 俺の知らない世界だ。 「封牙、これ持っとけ」 春輝にライターと爆竹を渡された。 とりあえず…持っとけばいいのか? こんな時に花火って想像出来ない。 「全部が終わったら話すから」 春輝は、そう言って俺の肩に触れた。 事情は何であれ理人がピンチに変わりない。 絶対助ける… 重たい鉄の扉を開け放つと、 中では煙草の匂いが充満し、 異常な視界の悪さと甘い匂いが鼻について 頭痛がした。気持ち悪いな。 「ごめんな」 それを察したのか春輝が俺を背に庇うように前に出た…「大丈夫」と言ってみたが慣れるまでにもう少し時間がいる。 春輝と階段を降りていくと、受付前には誰も… いない? ガタンッと音がして、後ろからゾロゾロと人が降りてくるのと、閉じ込められた事がわかる。 逃げ場は無い。 受付のカウンター奥や、フロアの奥から人が湧いてくる…狭い場所にまるでゾンビのようにそいつらは薄気味悪く湧いてきた。 「想定内」 春輝がニヤニヤと笑いながら言った瞬間、 シュッと瓶が飛んできて俺も春輝も屈む、 視界の悪い中では避けるのがまだ精一杯だ… やりずらい。 瓶が壁に当たり割れた瞬間、一斉に男たちが向かってきて、春輝が即座に俺をカウンターの裏に押しやった。 男達が何人で来ようが、 上手いこと交わして蹴りを入れる。 ほぼ一撃… 普通何発か入れて相手を倒すものなんだろうが、 明らかにその一撃が重たい。 鈍い音を聞くと、相手の骨折れたか? 何んて心配する程だった。 「これが、春輝か…面白れぇ…」 だんだんとワクワクしてきた。 こんな状況がまず久しぶりだ。 楽しむところじゃ無いのに、 俺もやりたい。 そんな衝動に駆られてカウンターから出て走り出す。 「オリャッ!!!」 春輝の背後から来る男に飛び蹴りをかます。 そうすると数人紛れてフロアに押し戻された。 「ヒュー♬やるねぇ」 口笛を吹く春輝は全然余裕な表情だ。 フロアの奴らが立ち上がってくるのをみて、 一撃でいかないところが腹立たしい。 「すげぇ、強いな春輝」 「俺全然…まだまだ弱ぇよ」 一瞬だけそうやって会話をして一気に詰める。 フロアの壇上に飛び乗り円形のステージの上で、 まるで踊るかのように足技を繰り出す春輝は、 気づかぬうちに飴を加えていた。 スッゲェ余裕じゃん。 思わず笑いが込み上げた、 違くにあるポールに手をかけ高いところに登り飛び上がる… 一撃男に拳を奮うといつもより勢いがついて男が吹っ飛んでいくのを 気持ちよく感じた。 春輝と同じ壇上に上がる。 「いいね、俺たちがフロアの主役だ」 「なにそれカッコいい!!」 そう言って2人で笑い合うと、 また一斉に男達は懲りず向かってくる。 次から次と湧いてくるが、 俺の破天荒な拳に春輝は上手く合わせてることに不意に気付いた… 人に合わせてスタイルが変わるんだ… さっきまであんなに蹴り技で暴れてたのに、 つい目が離せなくなりそうだが、 目の前にいる奴を倒すのが先だよな。 春輝とうまいこと連携をとり大分制圧したように思ったその瞬間、 正面の舞台から男が拍手をしながら出てきた。 「速川…」 速川って言うのか…俺が舞台を見てると数人の筋肉質な男に紛れ理人…!!! 「理人!!!!」 身体中を縛られ顔面に血が…殴られたのか、 気絶してる。 くっそ…許せねぇ!!!! 思わず走りこむ「おい!封牙!」と春輝の声がしたがそれよりも早くステージに飛び上がった。 「血の気の多いやつ…」 速川と呼ばれた男は俺の拳をすんなり交わす。 なんだこいつ、強いのか?! ガッと、いきなり膝蹴りを喰らう。 思わず血の味が口に広がる。 「クソ!…速川、お前の相手は俺がしてやる、こっち来いよ」 俺が地面に転がり苦しげにしてると、 理人が目を覚まして目が合う。 「封…牙?」 「くっ…理人!!!!!!」 身体中が熱くなるのを感じて、 男達に立ち向かう…体格差が圧倒的に違って、 跳ね返されるが…怯むかよ!!! 「ぶっ殺す!!!!」 ゴッと拳が男の顔にヒットすると、 鈍い音がした。 俺だって一撃で倒せんだよ。 「封牙!落ち着け!」 「りーちゃんは、こっち…」 誰だ??急に細い男が理人の顎をグイッと上げ何かを飲ませる。 「っ、ゲッ…」 理人が飲まされた液を必死に吐き捨て苦しげにしている。 なんだよあれ…クソッ!!今助けるからな!!! 体格の良い男達に囲まれ思うようにいかない。 最悪だ…くそ!! 「ッアっ、、、」 急に苦しげな声が後ろからする。 速川が春輝に首を絞められ、地面に落とされていた。 …もう…決着がついたのか? 「あのさ、何回やってもお前じゃ俺には勝てないよ」 「わかってる、わかってんだよ…クソが」 速川と言われていた男は何故か口調とは裏腹に嬉しそうだ。 「俺だって…」 その瞬間頭の中が真っ白になった。 男達の悲鳴が聞こえる。 なんか腕が痛い…熱い… 「封牙!!!!!」 ッ!?…春輝の声がして口の中に血の味がした。 …あれ?なんだ?痛いわけじゃない… ただ優しく俺を包む腕があったかい。 なんだろう? 「封牙ッ!!!!」 「理人?」 理人の声にハッとすると、男達が無残にも血だらけで倒れていた。 …それと… 「ってぇ…」 春輝の腕から血が出ていた…俺、もしかして。 やっちゃったのか… 昔からどうも暴走癖がある…春輝にまで 噛み付いていたのがわかり直ぐに離れる。 「ごめん…俺」 「わかる、俺もやりがちだから。」 そう言って俺をぎゅっと抱きしめてくれた。 暖かい… 体が震えていたが落ちついてくる。 春輝は理人に急いで駆け寄り身体の拘束を解いていた… 「大丈夫か?何飲まされた?」 「酒だな…」 「平気?」 「あぁ、ある程度は飲まないように吐いた」 拘束を解かれ理人は俺の方に近づいてきて手を握ってくれた、俺の手が血だらけなことに気付く。 「人殺しにならなくてよかった」 「理人〜…」 泣きそうだった、… 理人が無事ならそれでいい。 すると急にガタンッと音がして、またギラついた男たちがなだれ込んできた… 「うじゃうじゃ湧いてきすぎじゃね?」 春輝が嫌そうな顔をしている。 俺と同じで、あんまり戦うことは好きじゃないのか? 「やるぞ…俺も加勢する…やられっぱなしじゃ帰れない」 「わぁお、…理人やる気満々じゃん」 「理人がやるなら俺もやる」 理人と目が合うとお互い頷き合った。 よし、動ける。 「りーちゃん…」 息も絶え絶えに後ろから声がした。 変な水…酒を飲ませてたやつか… 「…お前が仕組んだのか?」 「違う…違う…」 なんだ?さっきまでとは何か違う… それを感じ取るよりも早く春輝が理人を引き寄せると男はナイフを振りかざしてきた。 「なん?!」 理人もだが、俺も驚いた… さっきと違って荒い息遣いに敵意剥き出し。 なんだ?こいつ? 「こんなとこにまで…」 春輝がボソッと口にして男に詰め寄り、ナイフを蹴り飛ばしてそのままの勢いで顔面も蹴り上げる。 すると泡を拭いて男は地面に倒れ込んだ。 弱い。 それがきっかけのように入ってきて様子を見ていた男達が流れるように入ってきた。 全員それぞれに武器を持っている。 いかれてるのが俺でもわかる。 即座に理人が前に出て軽く男の腕を叩き落としパイプを握ると、次々に入ってくるやつに向かっていった、俺も!…理人に続いて駆け抜ける。 ずっと一緒に喧嘩に立ち向かってきたから、 動きやすい。 やっぱり理人の隣が1番慣れていた。 …?? その瞬間、目がおかしくなったのか? 理人がふらついたように見えた。 「ッ…なんだ、くそ…」 パイプを手に地面に這いつくばる理人にゾッとした、さっきまでそんなことなったのに!? しかし、次から次に来る人間を引き止めるので精一杯だ…理人に1人の男が殴りかかろうとした瞬間、春輝が思いっきりそいつを殴り飛ばして安心する。 「理人、こっちみろ」 「…はぁ…なん…なんだよ…」 春輝が真剣に理人を見ていた。 何が起きてるんだ? 「これを飲め、マジで巻き込んでごめんな」 何かを渡しているようだ。 薬?カプセルのようなものを理人が眺めていた。 「何だよこれ…」 「ゆかりを信じて…俺を信じて飲め、早く!!!」 焦る春輝に何かが起きてるように感じる。 理人を庇うように俺も春輝も応戦するのに必死だ… 水もないまま理人が薬を口に含んだ瞬間… 「グッ…」 口から血を吐いた。 「理人!!!」 俺が駆け寄るよりも早く、 春輝は理人の胸ぐらを掴んだ。 「絶対助けるから」 …え?…その瞬間世界が止まったように感じた。 春輝が薬を自分の口に含んで理人に口移しで飲ませていた…なんだ?凄い複雑な気持ちになる。 戦わなきゃ、、戦わなきゃいけないのに、 胸が苦しい。 「ッ!…」 理人が春輝を突き飛ばして口を拭っていた。 「お前な…」 「大丈夫、今のノーカンだから…俺も嫌だし」 と言いながら向かってくる敵をなぎ倒していた、 あの一瞬の出来事だったのに、 なんであんなに鮮明に俺の目に焼き付いたんだろう。 その瞬間、ピピーーッと音がする…なんだ!? 「来た!逃げるぞ!」 いきなり俺と理人を春輝が引っ張る。 「まて、まだ終わってねぇ。」 「春輝?!」 「いーから!!!早く!!!」 素早く俺たちを連れて暗い細い道を春輝が駆け抜ける、 バンッ と扉を蹴破って外に出ると、おそらく店の裏だった… 途中まで走っていくが「待て、無理だ」理人が苦しげに地面に倒れながら言う。 「…わかった、ちょっとここにいろ」 春輝が路地裏に理人を連れて行く。 俺も居ようとしたが、「封牙には走りながら説明するから、来て」と引っ張られた。 1人にしたくなかったが「いけ」と理人に言われ涙ながらに走りぬけた。 「封牙、俺とバイクに乗って理人を迎えにいく、その先に俺の友達も向かってるから理人と一緒に警察からは逃げろ」 「なんで?」 「ごめん、詳しくは後で必ず説明する。」 そういって、やっとバイクの場所まで辿り着き、 春輝と急いで乗り込んだ。 さっきと同じように絶対法定速度を超えてるだろう速さでバイクが駆け抜けていく。 さっきの場所まで戻ってきた瞬間… 警察の群れにたどり着く前に声をかけられた。 「封牙、降りて」 「え?」 「飛び降りろ、理人を頼む」 「わ!わかった!」 走るバイクから降りるなんて、どんな状況なんだろう… 映画のワンシーンみたいで笑っちゃうけど、飛び降りて路地にいた理人に駆け寄る。 「封牙!!理人を頼んだーーー!!!」 そう声がして、春輝は走り去っていく… え???放置?? …ふと警察と目が合う… えっと、あれか!?? 思わずポケットにあった爆竹に火をつけて投げる。 意外にも音だけじゃなく白い煙が視界を悪くした。 プップーとクラクションの音がすると、 いかにもタトゥーだらけの怖い男が、 「貴方達がはるちゃんの友達ね!早く!」 なんて、可愛げに声をかけてきた。 不意に春輝がオカマの真似がうまかったのを思い出した、友達がいたのか。 とりあえず車の後ろに理人と乗り込むと車が発進した。 「「はぁ…」」 思わず俺と理人が同時にため息をついて笑い出す。 「ふふ、仲良しなのね」 春輝のお友達は見た目とは違って優しく言ってくれた… 仲良し…か… 「なぁ、理人〜」 「ん?」 振り向く理人の唇に自分のを重ねた。 ほんの一瞬だったが、理人が驚いて目を開く。 あ、珍しい顔してるなぁなんて思ったのと、 突き飛ばされなかったことが嬉しかった。 「な、なん…どうした?」 急にマスクをしはじめる理人にまた笑ってしまった。 「なんとなく!!!」 「なんとなくでするな!!!」 なんて、 2人で会話して車の中では終始笑っていた。 春輝からも理人からも、 事情はいろいろ聞かなきゃいけないけど、 なんか不思議と悪い日じゃなかった… これが良かったことなのかわからないけど、 もっと考えないと、 強くなりたいな… 理人を守れるように。 END …… はい!めばるです! もう大分終盤に差し掛かってきていますが… 学祭シナリオラストでしたーーー! … この話いろいろ語りたいことはあるんですけど… もうさぁ、理人と封牙が可愛くて仕方ない( BLかぁ、どうやって書こうかなぁって迷ったんですが割とサクサクイメージできたように思います! 春輝は女の子が好きですけど、 メンズと出来ないわけじゃない… マルチみたいなタイプにしちゃいました。 (シナリオの為に(キャラ設定動かしがち この後に起きることが複雑だから、 本当に語りづらいんですけど… …理人と封牙について、知ってもらえたら嬉しいです!!! シキコーの天下一武闘会で凄い盛り上がったし、3人組でワイワイする日もあるんで、 撮影が楽しみだったり。 そして、マジでダンス動画撮ろうかって話をしてるんで上がるのを楽しみにしていてくれたら嬉しいです!!!! …この話の中に、たくさんの伏線が張られているのですが… ここから、が… ラストスパートになるような感じでもあります。 …… 幸せな未来を描けるように、 後数人のコラボいただく方にお力を借りて シナリオを終えたいと思います!! ではまた!
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!