234人が本棚に入れています
本棚に追加
第4話
(桐生)
手をふり払われ、俺は呆然と立っていた。
散々傷つけた記憶と後悔だけが残っている。
やっと皐月を探して、今日会って話ができると期待する自分がいた。
横目で何度も皐月に視線をおくる。変わらない、トゲトゲとした皮肉っぷりにほっとした。それでもほっそりとした体に、顔色だけが悪そうにみえる。目元には薄らとクマがあった。
振られたと耳にはいり、チャンスだと思った。
いましかない、とも思った。
どうしても三年ぶりの再会にしては短すぎて、納得がいかない。
そしていま諦めると、また、二度と会えない気がした。あの時と同じように皐月が突然いなくなった記憶が蘇る。
もう、手放したくない。
わるいと思いつつも、俺は震える皐月の手をずっと握っていた。
最初のコメントを投稿しよう!