睦月という名の愛しい人

2/25
前へ
/63ページ
次へ
三月はクイズ番組があまり好きじゃない。普段だって一緒にいる時に見るのはちょっと気が引けるのに、12時間も見るのは申し訳ない。 俺の部屋にある小さなテレビで見ればいいけど、なにせ生放送だから見る方も気合いが入る。 お昼にクイズ番組が始まってすぐ、三月は出かけて行った。 「ちょっと実家に行ってくる」 きっとおせち料理とかご馳走様をもらってきてくれるに違いない。 嬉しい。優しい。ありがたい。 でも早く帰ってこないでね。 「元旦なんだからゆっくりしてこいよ。俺はクイズ番組見てるから、気遣い無用だ」 「うん。そうする」 『できればクイズ番組の終わる23時50分までは帰ってこないでくれ。でもおせちは食べたいから23時51分に帰ってきてくれ』とは言わなかった。 「いってくる」 三月は出て行った。 しかしなんと5時間後にはもう帰ってきてしまったのだ。 「ただいま」 「おう」 「おせちちょっと貰ってきたよ。あとオードブル」 「ありがと」 生放送クイズはあと7時間もあるのに。なぜこんなに早く帰ってきたのだ。馬鹿。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加