睦月という名の愛しい人

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早押しの途中で答えがわかる人の意味がわからないし、そもそも答えを聞いても意味がわからない。 俺って少し馬鹿なのかしら。 ふと、学生時代の六月との会話を思い出した。 『先輩は塾とか行ってましたか?』 『いや、行ってない』 『俺なんて掛け持ちしてましたよ』 『俺は勉強嫌いだから。受験の時も全然勉強しなかった』 え、どういうこと? 俺は塾を2つも掛け持ちしてやっとこの学校に入ったのに、六月先輩は全然勉強せずに同じ学校に入ったのか…。 なんかちょっと腹が立つな。 当時の気持ちを思い出して、余計クイズ番組が憎くなった。 日常生活で使いもしない知識を振り回したって、なんにもならないだろうに。 三月が不貞腐れている。 テレビがイヤなら、部屋でゆっくりすればいいのに。それでもせっかく2人が揃う休日だから、くっついてくれているのだろう。 しょうがないな。 俺はCMのタイミングでトイレに立った。 そして戻ってくると三月の腕の中に潜り込むようにこたつに収まった。 そのままテレビを見続ける。 「何?何?」 「別に」 「ふーん」 とか言いつつ俺の腰に腕を回してきた。 優しい指先がおへそのあたりをそっと撫ぜる。
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