睦月という名の愛しい人

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「クリスマスに食べられなかったから、お正月に食べたんだよ」 「僕はクリスマスに食べましたよ」 六月が買ってきてくれたのだ。 「いいな。僕は駅前の出張販売まで行ったのに、12個入りのパックしか残ってなくて、諦めた」 「12個はさすがに食べ切れないですね」 六月も駅前の出張販売で買ったと言っていた。知らぬ間に所長と六月はニアミスしていたのかも知れない。 「僕の前の男女2人は、ジップロックの袋に入れて分け合ってたよ」 「フライドチキンをジップロックにですか?そのまま冷凍出来るし、良いかもしれないですね」 「俺の友達もジップロックで分けてましたよ!」 友達というか恋人なんだけど。 まさに六月がジップロックで持ち帰ってきたのだ。 ジップロックでチキンを分け合う人が世の中にそうそういるとは思えない。つまり六月は本当に所長とすれ違っていたのだ。 知り合い同士がすれ違ってるって、なんだか不思議な気分だ。 「そうなの?ひょっとして同一人物かな。その人は病院関係の人?」 「いえ、違いますけど?」 「女の人は病院の白いユニフォーム着てたから」 「あの駅前の病院の制服ですかね?」 「そうそう」
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