睦月という名の愛しい人

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しかも2人とも今カレ(俺のこと)の知人なんだから。 それなのにどうやら六月はかのこさんとケンタッキーをジップロックで分け合ったのだ。 しかも聖なるクリスマスに。 駅前の出張販売所で。 それを俺に黙っていたのだ。 なんで黙っていたんだ? 浮気? 浮気じゃなくとも、どこか浮ついた気持ちがあったのかもしれない。だから後ろめたくて黙っていたのかもしれない。 まさか、正月に俺とずっといちゃついていたのもその穴埋めなのかな? 疑心暗鬼に陥ったまま、俺は1日中そのことばかり考えていた。 「あけましておめでとう」 仕事始めで会社に行くと優しい上司の堀米さんがそう言った。 「おめでとうございます」 「今年も宜しくお願いします」 「こちらこそお願いします」 正直言ってこう言う挨拶は苦手だけど、堀米さんとなら平気だ。 年末年始にかしこまった挨拶をするのが苦手だ。小さい頃からそうだった。 多分父親のせいだろう。 物心ついた時から俺と姉さんをわざわざ正座させて、挨拶を強要していた。 小さい頃、恥ずかしくてもじもじと挨拶したらすごく怒られた。 それから、こういう改まった挨拶が大嫌いになった。 いやだなあ。
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