睦月という名の愛しい人

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そう考えると俺の人生のほとんどが、父親にされたイヤなことのトラウマで出来上がってる気がする。 勉強が嫌いなのも、父親が教師だったせいだろう。 誕生日を祝われるのが嫌いなのも、子供の時に怒られた事があるからだ。 ひょっとして三月と付き合っているのも、三月の担任だった父親への当てつけなんだろうか? ありえないけど、たまにそんなバカバカしいことを考えてしまう。 「おはようございます」 「あけましておめでとう」 「あ、はい。今日は寒いですね」 新年の挨拶など無視して現れたのは、同僚の道端さんだ。 子育て中で時短勤務の正社員。俺より少し年上。 今まであまり接点がなかったけど、時短になって同じチームになったら自然と少しずつ仲良くなってきた。 人見知りとしては、会社でそういう関係が築けるのが嬉しい。 「2人とも新年早々申し訳ないんだけど、お昼にお得意先に挨拶しに行ってくれる?」 「僕たちだけでいいんですか?」 「うん。お願いします」 道端さんはまだしも、新年の挨拶に愛想が少なめの契約社員である俺が行っても大丈夫かな? 少し心配になったが、次の堀米さんの言葉でなんとなく理由がわかった。
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