睦月という名の愛しい人

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「良かったら帰りに2人でお昼ご飯でも食べてきてよ」 そう言って封筒を渡してくれた。 「お金じゃないよ。貰い物の商品券」 堀米さんは笑った。 「気を遣ってくれたんだね」 俺の運転している社用車の中で封筒を開けた道端さんが呟いた。 「1,000円の商品券が5枚」 「5,000円ですね」 「本当に貰い物なら、5,000円の券が1枚ということもあるよね」 「なるほど」 「1,000円の商品券が5枚なら余った分を2人で分けられるね」 「嬉しいですね」 「本当だね」 道端さんは無邪気に笑った。 「たまに出かけるとリフレッシュになるね」 「はい」 「何を食べようか?好きなものは?」 「なんでしょう。何がいいかな。道端さんは何が好きですか?」 「うーん中華かな」 そういえばこの2人だけで社外に出かけることは滅多にない。なんだかリラックスした空気が流れる。 「どうして僕たちにだけ気を遣ってくれたんでしょう?」 「私達2人とも忘年会に行ってないからかな?」 「なるほど」 「飲み会苦手なの?」 「苦手です」 会社では言いにくいことも、あっさり答えてしまった。
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