魔法なんか

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「わぁ。バイキングみたい!」 「今日はすごいなぁ」 「ま、まぁね」  ぎっしりと食卓に並んだ豪華な料理のかずかずに、子供がはしゃぎ、夫は目を丸くする。  ペンのことを隠すアーニャは、少しやり過ぎてしまったかなと、頭をかいた。  ポンポン出てくるのがおもしろくて、食べたいものを片っ端から書いてしまったのだ。  そんなアーニャに夫は少し気を止めた。が、「ね、お父さんこれ見て!」と子供に袖を引っ張られて、気は子供のほうへと向いていった。  楽しそうな子供と夫を見て、これで良いのだと、アーニャは自身を納得させる。  けれども、高額な商品を勝手に購入してしまったことは言いだせなかった。  それから料理はがらりと変わった。  宿のような朝食を出してみたり、食べたことがない海外の料理も気軽に味わえるようになった。 「あれ?」  そんな楽しい日々が続いたある日、終わりは突然やってきた。ペンのインクがなくなり、書けなくなったのだ。  ペンを再購入しようかと、アーニャは考えこんだ。  けど、もう使えるへそくりはない。 「言わなきゃいけないかな」  子供もまだ学校から帰ってこない部屋で独りつぶやくと、アーニャは顔をパンッと叩いて気合いを入れ、台所に向かった。久しぶりに料理をするために。
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