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仔馬の名前
ドドドの汚れた蹄鉄を見て、蹄鉄職人の暖賀須(ダンガス)は笑った。
「ドドドやい」
その直後に怒号が響いた。
「おめえは何でいつもいつも、茶色いあれを踏んづけるんだ! 俺っちが丹精込めて作った蹄を汚しやがって…お前もう10歳だろう。自分の足元くらいまともに見えるようになれ!」
『申し訳ない、申し訳ない…オヤカタ…』
カグヤドリームの2022は側から申し訳なさそうに父とダンガスを眺めていた。父親がヘマをした原因は自分だと思っているのだろう。ダンガスはしばらくドドドにお説教をした後、カグヤドリームの2022を見た。
「あと、ジュニア…お母ちゃんが探してたぞ。早く元気な姿を見せてやれ」
カグヤドリームの2022は頷くと、速足で母親の待つ馬房へと戻っていった。
「全く…きれいにしてやるから脚を上げろ」
ドドドの声は、ダンガスには嘶きにしか聞こえないが、その申し訳なさそうな嘶きに、少しだけダンガスの心も落ち着いたようだ。
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