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その直後に、ドドドは”しまった”と言いたげに表情を変えた。こんな難しいことを言えば、カグヤドリームの2022は黙っていない。
『大馬鹿者…? 分かりづらいよ。もう少し具体的に言って』
ドドドは誤魔化すように『お前ならわかる』と言った。本当はわからないくていいから別のことに興味を示してくれと思っていそうだ。
『…わからないから聞いているんだけどなぁ』
ドドドが父らしい厳しさを見せると、息子のカグヤドリームの2022はじっと父馬の、その茶色の瞳を映した。
『昔の偉い人が、鹿を王様の前に連れて馬と言い張ったから馬鹿…それが強調されているのだから、常識に捉われない決断力と大胆さを持ち、場合によっては自分の考えを強引に推し進めるくらい力強く立ち回りなさい…か。難しいことを言うなぁ』
ドドドは口を半開きにしながら自分の息子を眺めていた。我が仔ながら末恐ろしいと感じていそうな表情だ。
やがて、カグヤドリームの2022は思い出したように言った。
『ちょっと、気分転換してくる』
カグヤドリームの2022は納屋から出ると柵の下を潜り抜けた。柵と地面の間に空いた空間は、彼が夜のうちに一生懸命前掻きをして掘ったのだろう。普通の仔馬では通り抜けられないが、体の柔らかいカグヤドリームの2022ならできる。
その行動にドドドは首をひねった。
『一体、どこに行くつもりだ?』
ドドドがじっと息子の行動を眺めていると、カグヤドリームの2022は草陰に首を突っ込み、小さな浮き輪のようなものを出した。それを頭から被って肩にかけ、蹄の音を立てないように歩いていく。
ドドドもまた、音を立てないように牧場の柵を飛び越えると後を付けた。
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