2022年5月 お父さんの幸せ回路

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 カグヤドリームの2022のやってきた場所は川だった。ドドドたちの住むグランパ牧場の近くには一見穏やかに見えて、水量の多い川が流れている。  彼はちょこんと前脚を川の中に入れると、少しずつ歩きながら水に浸かっていく。今は夏日和なので気持ちよさそうだ。 『し・げ・き・て・き… 川って大好き!』  カグヤドリームの2022はそういうと、音を立てずに器用に4脚を動かしながら泳ぎはじめた。彼の泳ぎはとても静かだがスピードはなかなかに速い。流れに逆らいながら上流へと進んでいく。  ある程度まで進むとカグヤドリームの2022は水中で静止した。すると水の流れに押されて下流へと進んでいく。いや、よく見れば水の流れよりも速い。どうやら彼は4本の脚を逆に蹴ることでバック水法を行っているのだろう。  最初に入水した位置に戻ると、再び上流を目指してスイスイと泳ぎ始めた。  ドドドが木陰から顔を出したのはそんな時だった。 『ジュニアの奴は…もうプール調教を受けているのか!? そんなはずないか』  彼はカグヤドリームの2022に近づくと声をかけた。 『お前、いつの間にこんなことを覚えたんだ?』 『親切なツバメさんから教わったんだよ』 『なんだと!?』  ドドドが驚くと、カグヤドリームの2022は笑みを浮かべてから補足した。 『3月の上旬ごろかな…柿崎ツバメさんに、小さな葦毛馬の出てくるアニメを見せてもらったんだ。どんな厳しい練習にもひたむきな姿に感動してね。僕も見習って水練から始めることにした』
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