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因みに柿崎ツバメという人物は、グランパグループで唯一動物の声がわかる女性だ。この仔馬は、彼女からタブレット端末を借り様々なことを知ったようだ。
例えば198分の1。
198は2000年から2015年の間に、このグランパ牧場が世に送り出した牡の競走馬の数だ。そして1というのは種馬として牧場に戻ってこれた数。戻ってこれなかった馬の足取りを調べた時、彼は仔馬とは思えないほど険しい顔をしていた。
カグヤドリームの2022が静かに泳いでいると、ドドドの叫び声が響いた。
『そんな泳ぎでダービー馬になれるか! ジュニア…これが父の泳ぎだ!!』
間もなく、仔馬は唖然としながら父馬を眺めた。
勢いよく飛び込んだドドドであるが5月上旬では川の水温は低い。その深みに脚を取られたのか、彼は派手な水しぶきを上げ情けない顔になって叫んだ。
『うお…おあ…のあ!?』
カグヤドリームの2022は冷静に周囲を見渡すと、ドドドから離れた。
『あがあぐ…はぐほ…あぐあご…』
カグヤドリームの2022は、流れてきた流木を前脚と口を使って手繰り寄せると、ドドドの目の前に突き出した。ドドドもすぐに流木にしがみつき最悪の事態を免れたようだ。
『水辺は危ないから、気を付けて入ってね』
『面目ない…』
実は、ドドドは何度もプール調教を受けてきたが、グランパ牧場の標高は約1500メートル。平地と同じ気分で泳ごうとしてしまったのだろう。
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