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やがてネイチャースイミングを終えると、2頭は牧場へと戻りはじめた。
『後で体を乾かさないとカゼひいちゃうね』
『春先の私のように熱でも出たら大変だからな』
ドドドが答えると、カグヤドリームの2022は深刻そうな顔をした。
『お父さんのお仕事…上手くいったの?』
『…まあボチボチな』
ドドドはそうお茶を濁そうとしたが、カグヤドリームの2022は『ならいいけど…』と言いながら心配そうな表情を崩していない。
本当はドドドは、大きな問題を抱えている。
春先に高熱を出してからというもの、種付けの仕事が全くうまくいかなくなった。彼の種付け料1000万円は牧場にとって大変頼れる収入源となっているため、不調は死活問題だ。
カグヤドリームの2022は浮き輪を隠した。
『またオーナーが、偉い人たちから仔馬を売れって突き上げられたら困るもんね』
ドドドは困った顔をした。彼自身が種馬として人気がなくなって厄介者功労馬になることより、牧場の経営が悪化して仔馬を売らなければやっていけなくなることを恐れているのだろう。
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