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2017年11月 東京競馬場の悲劇
大逃げ一族。その中でも最高傑作と言われた名馬がいた。
彼の名はドドドドドドドドド。栗色の毛並みで、これと言って大きくも小さくもない。特徴といえば緑色の覆面を付けていることと、四脚の膝から下が白いことくらいだろう。
そんな競走馬が観客たちの視線を一身に受けていた。観客のほとんどが、その馬が最初から最後までトップを走り続けることを望んでいるのだろう。先行する馬は後続馬に邪魔されることなく最短ルートを走れるので強い。そういう声まで観客席から聞こえてくるほどだ。
たった今、倍率が確定した。ドドドドドドドドドの人気は18頭中1位。単勝倍率1.2倍。
全ての馬がスタートの準備を整えた。間もなく天王賞が始まる。
赤い旗が振られると、ゲートから一斉に競走馬たちが飛び出した。その18頭は誰しもが実績を持つ選りすぐりの猛者たちだ。その馬群の中から緑色の覆面を付けた馬が浮き上がるように姿を見せる。彼は観客たちの期待通り後続馬たちを大きく突き放した。
「1000メートル57秒5、この調子だ!」
ドドドドドドドドドが第3コーナーに差し掛かる頃には、2番手のシリウスレコードとは10馬身、およそ24メートル。更に3番手とは12メートルの差をつけた。もはやテレビカメラは大きく引かなければ、先頭から最後尾までの馬を映しきれない。実況者が興奮気味に解説を続ける間も、ドドドは後続馬との距離を伸ばしていく。
カメラが全ての馬を映した時には、関係者の多くが勝利を確信していた。このままドドドは走り抜ける。大逃げを見せてくれると固く信じて疑わなかったようだ。
第4コーナーの直前で、彼の脚の骨が異常をきたすまでは……
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