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伊織が自動車に近づくと、初老の男性が自身の名前を話し始める。
「まだ言ってなかったな。 俺の名前は夕凪哲雄だ」
夕凪哲雄と話した初老の男性は、伊織に車の窓をから右手を出した。伊織はとっさに右手を出して握手をした。哲雄は茶色い革ジャンを着て黒いジーパンを履いていた。
「俺の名前は篁伊織です。 これからよろしくお願いします」
「挨拶は出来るんだな。 かなり落ち込んでいると聞いていたから、少しは安心したぞ。 ほら、後ろに早く乗りな」
そう言われた伊織は、自動車の後部に乗り込んで椅子に座った。伊織がシートベルトを締めたのを確認した哲雄は、車を発進させた。
「前に住んでいた場所は神奈川だっけか? ここまで時間がかかったろ?」
「数本乗り継いだだけで、それほど時間はかからなかったです」
「そうか。 ま、着いたらお茶でも出してやるよ。 あ、家はカフェと併設してて孫娘もいるからな」
「孫娘ですか?」
孫娘と言われて伊織は他にも住んでる人がいるんだと少し安心をしていた。伊織以外にもいることで、離す人がいると思ったからである。
「俺の孫娘だから、お前の遠い親戚でもあるな。 遠縁だけど家族だから、新しい家族だと思ってくれ」
「ありがとうございます」
伊織はそう返事をすると、窓から外の景色を眺めていた。それから数分で哲雄のカフェを併設している家に到着をした。
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