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アルツハイマー
父、雄三がおかしくなったのは一昨年の冬からだ。会社から帰宅途中に山手線に乗ったのはいいが、どこで降りていいかわからなくなった。
ホームで不審に思った駅員さんが、電話をくれたので助かった。
またある時には、車を運転して一方通行の道を逆走しようとした。すぐに警察に捕まったのでことなきを得たが、事故を起こしていたらと思うとゾッとする。
それ以来、免許は取り上げた。というか車のカギを渡さなくした。これには父も怒って「馬鹿にするんじゃない、ボケ老人みたいじゃないか!」と哲也に殴りかかってきた。バットは持ち出すわ、食器は投げるわの騒動に発展した。
病院の診断は、若年性アルツハイマーだった。父は60歳を迎えていた。薬を飲んでいかに進行を遅らせるかしか、他に手立てがなかった。
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