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アルコール依存
弟の健次はアルコール依存症だ。もともとは城東大の政経を出て大手広告会社に就職したエリートマンだった。25歳で結婚し、立派なマイホームを建て、2人の男の子を授かった。
ところが一昨年の父の異変から、様子がおかしくなった。その年に部下が起こした不祥事の責任を一手に引き受け、おかしくなった。南米出張でアルコールや麻薬に溺れ、帰ってきたときには身も心もボロボロになっていた。
奥さんと子供には逃げられた。家は奥さんへローンごと譲渡した。離婚届に判を押してから、健次は朝から酒を浴びるように飲み始めた。会社には適当な嘘をついて休むようになり、会社から辞職勧告という形で、自主退社した。退職金も失業保険もみんな酒や風俗そして裏カジノに消えていった。
そしてある朝、路上で大の字に寝ているところに車が接触し、そのまま救急入院となった。精神病院だった。特別治療室、通称『ガッチャン部屋』に手足を縛られ、バスタブのようなベッドに1週間拘束されたらしい。監視カメラ付きで24時間見張られるのである。普通の依存者も病院の規則が守れないとガッチャン部屋に行かされるので、患者は皆恐れている。健次はよほど嫌だったのか、それ以来おとなしく病院に入院し、3カ月で退院となった。
しかし健次の断酒は続かなかった。精神疾患がひどく生活保護の金が入るやいなや、酒につぎ込んだ。リバウンドだろうか、前にもまして酒の量が増えていった。そうしてぐでんぐでんになっては、昼夜を問わず哲也に電話してくるのだった。
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