中学校

4/13
前へ
/38ページ
次へ
 結果から言うと勉強はちっともはかどらなかった。  カラオケ店に着くや否や実琴はノートを広げる前にタッチパネルのペンを握る。この流れは完全に歌う流れだ。  友人二人も当たり前のように「次なに歌う?」と選曲の話し合いをしている。 「ねえ、テスト勉強は? 勉強しに来たんだよね」  勇気を出して言うも、 「うん? そうだけどさ、歌わなきゃ損じゃん。誰かが歌ってる間に勉強する的な」 「そうそう。歌が終わるまでに単語を頭に詰めるみたいな?」 「タイムリミットあった方がはかどるっしょ」  全然はかどらないよ!  ……なんて言えなかった。  この人たち遊ぶ気満々なんだもの。  呆然とする私を余所に三人はカラオケ大会を始めてしまう。  結局盛り上がったのは私以外の三名で、私は明野さんとも円加さんとも会話もなく完全に蚊帳の外だった。 「しかも何も頭に残ってないし……」  はかどらない勉強会を終え、カラオケ店で明野と円加と別れ、姉妹で家までの帰り道を歩く。  私はやっとそこで実琴に文句を言う。しかし実琴にはちっとも響かない様子。 「カラオケ店に行って歌わないのは客としてどうよ」 それに関しては正論だがまず根本が間違っている。 「勉強場所にカラオケ店を選ぶな。図書館があるじゃん」 「図書館だと喋れないじゃん。交流が出来ないでしょ」 「交流って、勉強に必要ない……」  と言いかけて黙った。  もしかして、実琴は…… 「私に友達をつくらせるために今日誘ったの?」
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加