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結果から言うと勉強はちっともはかどらなかった。
カラオケ店に着くや否や実琴はノートを広げる前にタッチパネルのペンを握る。この流れは完全に歌う流れだ。
友人二人も当たり前のように「次なに歌う?」と選曲の話し合いをしている。
「ねえ、テスト勉強は? 勉強しに来たんだよね」
勇気を出して言うも、
「うん? そうだけどさ、歌わなきゃ損じゃん。誰かが歌ってる間に勉強する的な」
「そうそう。歌が終わるまでに単語を頭に詰めるみたいな?」
「タイムリミットあった方がはかどるっしょ」
全然はかどらないよ!
……なんて言えなかった。
この人たち遊ぶ気満々なんだもの。
呆然とする私を余所に三人はカラオケ大会を始めてしまう。
結局盛り上がったのは私以外の三名で、私は明野さんとも円加さんとも会話もなく完全に蚊帳の外だった。
「しかも何も頭に残ってないし……」
はかどらない勉強会を終え、カラオケ店で明野と円加と別れ、姉妹で家までの帰り道を歩く。
私はやっとそこで実琴に文句を言う。しかし実琴にはちっとも響かない様子。
「カラオケ店に行って歌わないのは客としてどうよ」
それに関しては正論だがまず根本が間違っている。
「勉強場所にカラオケ店を選ぶな。図書館があるじゃん」
「図書館だと喋れないじゃん。交流が出来ないでしょ」
「交流って、勉強に必要ない……」
と言いかけて黙った。
もしかして、実琴は……
「私に友達をつくらせるために今日誘ったの?」
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