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私は学校を休むようになった。
いじめもそうだけど、実琴との喧嘩が私のなかでかなり堪えた。
「実琴に悪いこと言っちゃった」
姉への罪悪感と自分自身への嫌悪感を感じていたら、なんだか全てがどうでもよくなった。
学校を休んで一週間。
あれから私のいない学級はどうなっているのか。
ぼんやりと考えるのは自分のことなのに何処か他人事のようで。
「……眩しい」
昼間からベッドに潜り、目を覚ますとカーテン越しに漏れる光が橙色になっていた。
ドスン、と上の方で音がした。
上のベッドからだ。実琴が帰ってきたんだろうか。
梯子の二、三段目まで足をかけ覗き込むようにそこを見る。そこにはベッドで制服を着たまま寝息をたてる姉の姿があった。
「実琴?」
制服のまま寝たら汚いよ。
言おうとするが喧嘩中だから声をかけにくい。
実琴は時々「うぅ、」と苦しそうな声を漏らしている。
「実琴?」
残りの梯子を上りきり横になる姉の様子を伺う。
「……っ!」
なにこれ。
半袖の制服から出た白い腕には無数の痣があった。転んでできる傷ではない。明らかに殴られてできた打撲の痕だ。
それを見て、私は気づいた。
姉が学校でいじめられていることに。
どうして実琴が? まさか安城たちがやったの?
でも、実琴は私と違って安城たちと関係ないはず。
「もしかして、私の代わりにターゲットにされた……?」
苦しそうに眉根を寄せて眠る姉の姿を見て、例えようもない気持ちに襲われる。
行かなきゃ。学校に。
私は明日の時間割り表を掴み、準備をした。
「……どうしていきなり行く気になったのさ」
靴紐を結ぶ私に実琴が怪訝そうな顔をして問いかけた。
朝七時半の玄関にて実琴と遭遇。
「別に」
私の方が靴箱に近かったのでそのままスニーカーを履きだした。
「ずっと休んでたら学校が恋しくなったの」
ちら、と後ろで腕を組み立つ姉の腕を見る。腕には包帯が巻かれていた。
包帯はいかにも適当に巻かれていて今にも解けそうだった。
「……腕かして。いいかげんすぎ」
私は包帯を綺麗に巻き直した。
実琴は真っ直ぐに巻かれた包帯を見つめ「ありがとよ」とぶっきらぼうに言った。
その言い方に笑ってしまう。
「もっと可愛くお礼言えないの」
「私はいつだってプリティーでしょうが」
「ねぇ私が学校行ってない間に安城たちに何か言ったんでしょ」
「べっつにー。よってたかって人の妹いじめて恥ずかしくないのって言ってやっただけだし」
「言ってるじゃん」
「だってムカつくじゃん! しかも逆恨みでしょ? なんで悪くない真琴が学校行けなくなるのか意味わかんない」
いつの間にか私たちは喧嘩をしていたことを忘れ、いつも通りに話していた。
「ありがとう実琴。今日から私も戦うよ」
実琴一人で戦わせない。
私たちは二人で一人の双子だから。
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