小学校

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 久しぶりにとった満点のテストを祖父に自慢しに行った時のこと。  祖父の部屋には既に先客がいた。  実琴が絵画コンクールで受賞した金賞の賞状を見せていた。  実琴は絵も上手だ。うちの家系はみんな絵が全然ダメだったから実琴の才能は珍しいって父も母も誉めていた。  祖父は実琴の頭を撫でて言った。 「勉強ならやれば誰もが出来るが絵画や音楽は才能がないと出来ないからな」  その言葉から頭を殴られたようにショックを覚えた。  実際には殴られてないんだけど、もう頭から血がドクドクと溢れていく感じ。  報告しようとしていたテスト用紙が急にちっぽけに感じて、私は姉が祖父の部屋を去る直前まで、ただ部屋の前の廊下で満点の答案用紙をシワくちゃになるまで握り締めていた。  その日から私は勉強をしなくなった。  次の日の朝。  学校でさっそく私は昨日の出来事を幼なじみのくーちゃんにチクった。  私の長い愚痴にくーちゃんは朝の会が始まってしまうんじゃないかとハラハラしている。  私はギリギリまでくーちゃんを自分のクラスに戻らないように引きとめた。  ちなみにくーちゃんと実琴は同じクラスだ。今ぐらい私の不満を聞いてくれたっていいでしょ?  くーちゃんは真面目な優等生だから、朝の会直前まで廊下でおしゃべりしているところを先生に怒られないかとヒヤヒヤしていたけれど、落ち込んでいる私を放っておけず顔を不安で青くさせながらも愚痴を聞いてくれる。 「くーちゃんも勉強が嫌になったりしない?」 「僕は誰かから褒めて貰うのはおまけだと思ってるからなぁ。自分のために勉強するわけだし」 「私だって将来の夢のためだもん」 「公務員だっけ?」 「でも、あんな言い方ないじゃん!!」 「僕にあたるなよ……」  くーちゃんは男の子だけど話しやすい。  幼稚園からの幼なじみだからって理由より、くーちゃんがくーちゃんという存在だから話しやすい。  きっと、他の男の子が幼なじみでもここまで仲良くならなかったと思う。 「実琴と比べるから良くないんじゃない? 実琴は器用だから何でも出来ちゃうけれど、そういう子って稀だし」 「その稀な子と双子になっちゃったから比べられるんです~」 「ありゃりゃ話が振り出しに戻っちゃった」 「うー……」 「こんなこと言っても慰めにならないけど、人と自分を比べてもしょうがないと思うよ」 「分かってるよ。分かってるんだよ……でも双子だし、もう一人の自分を見てるみたいで焦っちゃうんだもん……あ!」 「どうしたの」 「そういえば実琴って勉強しないけど頭悪いわけじゃないや。テストも割と高得点だし」 「そうだね。僕にも見せてきたけど」  どこまで器用なの⁉ 私はその場に居ない姉がブイサインして笑っている顔が浮かんだ。  またも劣等感を植え込まれてしまう。  案の定チャイムが鳴ってからも廊下で話す私とくーちゃんは職員会議から帰ってきた各担任の先生にお叱りを受けることになる。くーちゃんごめん。
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