小学校

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 祖父との件で勉強をしなくなった私には自由な時間が増えた。  それは勉強という義務を放棄しているから出来る自由なんだけど、好きな漫画を読んだりゲームをしたりする時間は楽しくもあり、楽でもあり、以前のような勤勉さはどこかへ吹っ飛んでしまった。  罪悪感はちょっぴりあった。  でも罪悪感は感じても成績は容赦なく現実を見せてくれる。自由な時間が多くなった分、私の成績は反比例にどんどん下がっていった。  容赦ない現実はテストの点数や成績表だけでなく、授業でも降りかかる。 「次の問題を……真琴。解いてみろ」 「……え?」  小学六年生の算数に完全に行き詰まる。  私は問題を解くことが出来ず、固まってしまう。  かといって、先生が答えのヒントを与えてくれることはなく、ただイライラとした態度で教卓の表面を指でとんとん叩くだけ。  その均整のとれたリズムに焦りを感じて余計頭が真っ白になる。 (さっきから同じ箇所しか目に入らない……!)  クラスの皆は何も言わないし、教室は静かだけれど、かえってその静かさが焦りと恥ずかしさに火をつけて頭は真っ白、顔は真っ赤になって泣きそうになる。 「おい、まだ解けないのか。お前が解けるまで授業再開できないんだからしっかりしてくれよ」  だったら早くヒントでも別の人にあてるでもしてよ!  私のせいにしないでよ。  解けない自分が悪いのなんて知ってる。  それにしたって先生の授業の進め方には悪意を感じる。  ……泣くな。  みっともない姿をクラスの皆の前で見せたくない。  皆にも申し訳ない。消えてしまいたいとすら思ってしまう。  いつの間にか私は問題を解くことではなく、泣くのを耐えることに全神経を集中させていた。  当然、問題が解ける筈もない。  涙で視界がぼやけそうになった時、机の端っこに白い小さな紙が置かれた。
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