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その紙には数字が書いてあった。
一瞬なんだろうと思ったが、それが今解いている問題の答えだということを理解する。
私は紙に書いてある数字を先生に向けて言うと、先生は「……正解だ」と面倒くさそうに次の問題を黒板に書き始めた。
「あの先生絶対サボりたいだけじゃん。問題を生徒に解かせて終わり。自分からは何も教えない」
効率が悪すぎる、そう言うのは幼馴染のくーちゃん。
放課後、助け船を出してくれた彼にお礼を言うと彼は算数の先生への不満を吐いた。
「くーちゃんが助けてくれなかったら私で一時間終わっちゃうところだったよ」
ありがとー! とくーちゃんに頬擦りする。
「……やめろよ」と照れながらも話を続けるくーちゃん。
「結局次にあてられた西田で時間オーバーしちゃったし、ためになる授業じゃなかったね」
「西田さん、気の毒だったな……」
私がくーちゃんのおかげで無事に問題を解いた後も先生の意地悪な授業進行は変わらず、次にあてられた西田さんが問題を解けず授業は終了となった。
「真琴は西田のことを可哀想って同情するだろ。皆同じ気持ちだよ。怒ったりしない。先生が悪いって皆思ってる」
くーちゃんは穏やかに笑って私の頭を撫でてくれる。
「大丈夫だよ」
くーちゃんの言ってくれる『大丈夫』は何故か本当に大丈夫な気がするから不思議だ。
「真琴!」
後ろの方から声がしたので振り返ると実琴が立っていた。その手には黒板消しが握られている。
「実琴、日直なの?」
「そ。一緒にやる男子がサボっちゃって。太田の奴ー!」
太田くんは一度同じクラスになったことがあるけれど、明るく元気でやんちゃな感じの男の子だ。
「人気者だからか何か知らないけど、サボる理由にならないっての!」
「そういう子だから人気出るってのもあるけどね」
くーちゃんが会話に入ると実琴はニヤ~っと笑ってくーちゃんの腕に自分の腕を絡める。
「あたしは断然ちゃんとお掃除やってくれる男子が好き。くーちゃんみたいな。ねぇ?」
「そんなこと言って僕に手伝わせるつもりだろ!」
「きゃー。くーちゃん黒板消し似合う~」
そのまま私も巻き込まれたくーちゃんと一緒に実琴の日直を手伝うことになって、私たち三人は放課後オレンジ色に染まる通学路を仲良く並んで帰った。
私と実琴、くーちゃんは三人でいることが当たり前で。
この時、私たちが離ればなれになるなんて知らなかったのだ。
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