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キャンディーを溶かす私の舌に、穂高さんの熱い舌が絡まってくる。
私を抱きしめる穂高さんの腕の温かさや、重なる唇の熱を感じながら、瞼の裏で彼と過ごした日々を思い返した。
今、確かに感じている穂高さんの熱も、彼がくれた言葉も、私の心に刻まれた記憶も、本当に全て幻想だったのだろうか。
もしそれが、《美織》の作り出したまやかしだったのだとしても、私は確かに穂高さんに恋をしていた。
優しく甘美な幻想の恋は、私を満たして幸せな時間をくれた。
「穂高さん……」
名残惜しげに私を抱きしめる彼の耳元で、その名前をささやく。
こうして彼と触れ合うのはこれが最後なのだ。朧げながらに悟った胸が、苦しく切ない。
私も穂高さんを愛してます。
私とあなたの恋の記憶が、このまま幻想のなかに消えてしまったとしても。
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