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「先に言っとくと、氷はない」
「へ?」
青柳さんが間の抜けた声をあげた私のそばを通り抜けて、研究室の隅っこにある小さな冷蔵庫の前に立つ。
彼が冷蔵庫から取り出したのは、いかにも味の濃そうな色のアイスコーヒー。容器がこの研究室に設置されたコーヒーメーカー用のポットだから、朝多めに淹れたコーヒーを、そのまま冷やしておいたのだろう。
棚からガラスのコップをふたつ取り出した青柳さんが、そのうちのひとつに黒々として苦味のありそうなアイスコーヒーをたっぷりと注ぐ。
いかにも青柳さんの好みに合いそうなその色を半ば引き気味に見ていたら、彼がもうひとつのコップにコーヒーとミルクがちょうど1:2になるように注いで私の前に出してくれた。
「ありがとうございます。アイスにしといてくれたんですか?」
「俺が暑いからだ」
「そうですか」
青柳さんがそう言うなら、そういうことにしておこう。
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