Fiction 0. Sample

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私の好みに合わせてミルク多めにしてくれたアイスコーヒーを有り難くいただきながら、苦そうなアイスコーヒーのガラスコップを口に運ぶ青柳さんをそっと見上げる。 今や薬学部の助教授となっている青柳さんと私との付き合いは、かれこれもう八年になる。 出会った当時まだ大学院生だった青柳さんは、私が入ったゼミの教授の研究を手伝っていた。 たまに私たちのゼミに参加して教授の補助をしていたけれど、暑い日も寒い日も必ず白衣を身に纏い、横に流した長めの前髪と眼鏡でいつも顔を隠していて表情が読めない青柳さんは、印象の暗い少し不気味な人だった。 そのうえ教授としか会話をせず、学生とは一切目も合わせようとしないから、私を含めたゼミ生のほとんどが青柳さんのことを苦手に思っていた。 教授の手伝いがないときの青柳さんの日課は、大学の温室にこもって何種類もの薬草を世話をすることで。 「院生の青柳さんは、薬草を採取しては怪しげな薬を作って、動物実験を繰り返しているらしい」という物騒な噂まであった。
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