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立っているのもやっとの状態でなんとか研究室のドアをノックすると、返事の代わりに教授のほうからドアを開けてくれた。
「あ、……」
失礼します。
そう言ったつもりだったけれど、実際には私の声は出ていなかった。
頭が朦朧として、額に冷や汗が滲み、手指が震えている。資料を持つ手の感覚すらも、よくわからなくなっていた。
「おい、大丈夫か」
倒れた身体が誰かに受け止められたけれど、耳に届く声に聞き覚えがない。
意識は朦朧としていたけれど、その声が教授よりもずっと若い男の人の声だというのはわかった。
「とりあえず、中入れ」
声の主に導かれるままに、教授の研究室のソファーに腰掛ける。背凭れに身体を預けたけれど、上体を起こしておくことすらままならず、私はソファーに沈むように倒れ込んだ。
膝を抱えて身体を丸めて低く呻いていると、熱を持った頬が突然ひんやりとする。
「水、飲めるか」
「あ、どうも」
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