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母校である大学の敷地内にゆっくりと乗り入れると、毎週木曜午後の定位置となっているゲストパーキングに会社の営業車を停める。
来る途中に調達してきた、ツナとタマゴのサンドイッチと紙パックのアイスティーが入った買い物袋をつかんで車を降りようとして、ふと助手席に無造作に置きっ放していた和柄の紙袋の存在を思い出した。
青柳さん、お饅頭好きかな。
そんなことを考えながら、これはもはやエスプレッソなんじゃないか、というくらい苦ーいコーヒーを啜る、眼鏡の奥のキリッとしたアンバーの瞳を思い出す。それに、和柄の紙袋とお饅頭とはあまり似合いそうもない。
なんだか笑えるから、お裾分けしちゃおう。
青柳さんの渋い表情を思い出してほくそ笑むと、一度は閉じかけた車のドアを開いて、和柄の紙袋を引っ張り出した。
青柳さんの研究室棟は広いキャンバスの一番角の端にあり、ゲストパーキングがある場所から一番遠い。
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