Fiction 0. Sample

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ドアが開いたと同時に、デスクのパソコンから面倒臭そうに顔をあげる青柳さんの顔。それを想像していた私は、なんだか拍子抜けした。 「青柳さーん?」 かくれんぼでもしてるのかな。 そんなことありえないけど、念のためもう一度呼んでみる。でも、それほど広くはない研究室のなかで、青柳さんの反応はなかった。 「教授にでも呼び出されてんのかな」 独り言をつぶやきながら研究室内へ足を踏み入れると、燦々と太陽光をあびまくっている窓際のソファーを目指す。 ここを訪れるときの私の定位置はそこなのだけど、今日は座れないくらいに暑そうだ。 「私のために、クーラーくらいいれといてよね」 クーラーの電源を入れるために窓を閉めて、日光が入り込む隙間もないようにカーテンをぴったり閉める。 「仕事サボりに来てるやつのために使う経費なんてねぇよ」 デスクの上のリモコンを取ろうと振り返ったとき、ちょうど研究室のドアを開けた青柳さんと目が合った。
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