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「それでなくても、職員は必要のないときのクーラーの使用は控えるように言われてるんだ。全館でクーラーガンガンかけすぎると、大講堂のエアコンの調子が悪くなるらしい」
ため息を吐きながら研究室のドアを閉めた青柳さんが、白衣の下のTシャツの胸元をつかんでパタパタと風を送る。
「あー、あち」
暑いなら、まず年中着ている白衣を夏だけでも脱ぐべきだ。
私がまだここの学生だったとき、青柳さんにそう指摘したことがある。
だけど彼は無言で、眼鏡の奥のアンバーの瞳を僅かに細めただけだった。
白衣の袖を肘の下まで捲り上げて暑がっている割に、青柳さんはほとんど汗を掻いていない。だから、きっと好んで着ているんだろう。
気怠そうに歩いてきた青柳さんが、手に持っていた透明なプラスチック容器をデスクに置いて、代わりにエアコンのリモコンをとる。
ブーンと低く唸りながら動き出すエアコンの音が聞こえてくると、私はにんまりとして、窓際で熱されたほかほかソファーの上に慎重に腰をおろした。
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