Fiction 0. Sample

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なんだかんだ言いながらいつも要望を叶えてくれる青柳さんは、結局のところ私に甘い。 そばに置いた買い物袋から取り出したサンドイッチのビニール包装を捲っていると、ふと視線を感じた。 「青柳さん、お昼は?」 ふたつ入っているサンドイッチのツナのほうを取り出して顔をあげる。 「温室で食った。ちょうどそれと同じやつ」 デスクの背もたれに頬杖をついた青柳さんが、私のツナサンドを指差す。 「気が合いますね」 「合わねーよ」 無表情で返してくる青柳さんは、いつもどおりつれない。 「温室で、また新しい薬草取ってきたんですか?」 ツナサンドをバクッと口に入れながら、青柳さんのデスクの上のプラスチック容器に視線を向ける。 そこには、私にはよくわからない薬草がいくつも採集されていた。 大学内の薬学部専用の温室にある薬草の栽培とその成分や有用性、配合した場合の効果など。青柳さんは、大学でそんなことを日々研究しているらしい。
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