20、心的外傷

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 「本当は抱きしめたくてたまらない。でも、贅沢は言いません。こうして、寝台に一緒にいられるだけで、望外の喜びなのです。――俺はいくらでも待ちます。姫も、ご自分を卑下しないでください。あなたは立派に役目を果たしたのです。今は、心と身体を癒すべき時です」  大きな手で力強く握られて、ジュスティーヌの身体の奥に熱が生まれる。鼓動が早くなり、羞恥でラファエルを正視することができない。  「休みましょう、姫――」  ジュスティーヌが横たわり、上掛けに包まるのを待って、ラファエルが蝋燭を吹き消す。暗闇の中で、二人は互いの身体には触れなくとも、互いの気配を感じ取って眠りについた。
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