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翌日。
一晩寝て、わたしは、頭がすっきり冴えていた。
朝ごはんを食べていると、きいさんが起きてきた。思いついた事を、伝えなくては、と思った。
「きいさん、わたし、お父さんに会いたい」
きいさんは寝起きだというのに、瞬く間にしゃきっとした顔になった。
「スマホでビデオ通話したらええがな」
「そういうのと違う」
きいさんが食卓の椅子に座った。
背を向けた裕子おばさんが、わたしたちの話に聞き耳を立てているのがわかった。
「レイちゃんも、多分、お父さんに会いたいと思う。でも、喧嘩してん。花火しようって約束して、できへんかったから。で、一人でお祭りに出かけて、変な世界に迷い込んでしまった。
花火くんは子供時代のお父さんかもしれへん。お父さんは変な世界から帰る時に子供の自分を置き去りにしてしまったんよ。
二人で一緒に帰りたいのは、二人とも、大人のお父さんに会いたいから」
「……ちゃんと書いて、お父さんに見せたらなあかんな」
「頑張るわ」
それから二ヵ月後。
八月。
わたしは物語を完成させて、国際便でお父さんに送った。
一ヵ月後、お父さんから、びっくりするようなテンションでビデオ通話がかかってきた。
すごく嬉しそうだったので、わたしも嬉しくなった。
ついでやから、ときいさんの勧めで、話をパソコンで打ち直し、児童文学の賞に応募した。
結果は佳作。
大賞ではなかったものの嬉しくなって、わたしはまた、きいさんと一緒に物語を作った。
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