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社長は人差し指を天井に向けて立てて愛想よく笑った。秘書課には課長を含めて15人の社員がいて、受付業務や各部署の部課長のアシスタント業務をしている。私は入社後に半年ほど受付を担当し、その後3年間、社長付きの秘書として働いていた。
「社長付きの秘書は3人いて、私は3番手ですけど、それでも適任ですか?私が社長だったらルーシーに頼みますけど」
ルーシーは社長付きの秘書の中で最古参でかれこれ12年も社長のアシスタントをしている。私の疑問に社長は苦笑した。
「アン、もう少し自己評価を上げてもいいんじゃない?私は君の人柄も能力も知ってる。その上で頼んでるんだ。君みたいに誰にも媚びず言うべきことを正直にはっきり言ってくれる人は、本当に困っている時に助けになってくれる。仕事もきちんとやってくれるし口も堅いしね」
真に受けていいのか、厄介な人事を飲み込ませるためのお世辞なのか、私は判断に迷った。
「あとは君、うちの息子と相性が良さそうなんだ」
「……相性ですか?」
聞き間違いかと思い、私はおうむ返しした。社長はなぜか意味深な笑みを浮かべた。
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