K.どこまでもついていく影

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言ってしまおうか、本当のことを。俺は一瞬だけ迷った。口にすれば俺の中のあらゆる歯車が逆回転を始め、すべての部品が弾け飛び、未来が変わってしまう言葉だ。 「俺はアンを——」 核ミサイルのスイッチを押すような気持ちだった。俺が決心したその時、アンの手が殴るような勢いで俺の口をふさいだ。同時に、フレッドが父親の肩を叩き、電光掲示板を指差した。 「父さん、まずい、俺たちの飛行機の搭乗ゲートが変わってる。空港の一番端のゲートだから、もうセキュリティチェックを通らないと乗り遅れるよ」 彼の言う通り、7時40分発のアメリカン航空シカゴ行きの搭乗ゲートはターミナルCという空港のはずれに変更されていた。セキュリティチェックを受けた後、搭乗ゲートまでバスで移動しなければならない僻地だ。不測の事態にアンの父親は歯噛みし、一人娘は勝ち誇った。 「じゃあね父さん、気をつけて。明日、電話するから。フレッド、ジェーンとリリーによろしく」 にっこりと笑う娘を何度か睨みつけつつ、アンの父親はフレッドに連れられて行く。 「アン、絶対に電話しろよ!ケイ、君とも近々、話をつけるからな!」
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