K.どこまでもついていく影

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遠くから届く鬼軍曹の叫びを聞き流し、アンはふんと鼻を鳴らした。      * 慌ただしくチェックインを済ませて搭乗ゲートへ向かうと飛行機の出発時刻が30分も遅れていた。アンは俺のジャケットを着たまま、ジョンに電話すると言って足早にその場を離れ、俺は窓際の待ち合いスペースの椅子に座って元婚約者からのショートメールをもう一度読み返した。 「サムライからのメールのことだけどさ、もしかしてあれって彼女が君に嫉妬してるってこと?」 電話を終えて戻って来たアンに尋ねると、彼女は俺の隣に腰を下ろし、興味深そうにこちらをじっと見つめた。 「あら、正解するとは思ってませんでした。本当のところは本人しか分からないと思いますけど、私はそう感じましたよ。サムライは私があなたと親しくしていることを気にしていると思います」 そういえば先週、元婚約者のマンションを訪ねた時、彼女は俺とアンの関係をさぐるようなことを聞いてきた。あれはそういうことだったのか。心臓がどきりと飛び跳ね、世界が薔薇色に染まった。俺は身を乗り出した。
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