2.魔女のような女

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「今度、トーキョーにいる息子をこっちに呼ぼうと思ってるんだ。本当はもう少しあっちで修行させたかったんだけど急に事情が変わってね。それで、君に彼のアシスタントを任せたいと思うんだけど引き受けてくれるかな?」 私が課長の隣に座るや否や社長は単刀直入に言った。誰が社長の息子の秘書に抜擢されるのか、秘書課のロッカールームでは専らの話題だったが、まさか自分がその貧乏くじを引き当てるとは思ってもみなかった。 「差し支えなければ教えていただきたいのですが、なぜ私なんですか?」 私は驚いてはいたが、悪い噂を理由に人事を拒否しようとは思わなかった。誰もが嫌がる仕事を引き受ければそれを条件に給料アップ交渉ができるかもしれない。 年2回の上司との面談では交渉できないような金額も日頃から私の働きぶりを見ている社長なら良しと言う可能性はある。だがなぜ自分が抜擢されたのか興味はあった。 「一番の理由は、君が私のアシスタントをしているからだよ。彼には少しずつ私の仕事を引き継いでいくつもりだから、私の仕事のことを分かっている君は適任でしょう」
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